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不倫相手が「慰謝料」負担しても知らん顔できる? 互いに「金銭要求」しない合意書の効力
画像はイメージです(metamorworks / PIXTA)

不倫相手が「慰謝料」負担しても知らん顔できる? 互いに「金銭要求」しない合意書の効力

不倫相手と「お互いに金銭を要求しない」という約束をしたが、有効なのだろうか——。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

相談者は不倫相手と別れる際、あとから揉めないように合意書を作りました。その内容は「今後お互いに金銭を要求しない」というもの。

ところが、別れたあと、妻に不倫が発覚してしまいました。実は以前にも、同じ相手との不倫がバレて、不倫相手とともに慰謝料を支払って、妻と和解したことがあったそうです。

一般論としては、不倫相手が、妻に慰謝料を支払ったのち、相談者にも負担を求めてくることは十分ありえます。ただ、相談者としては「金銭を要求しない」という合意に反するのではないかと考えているようです。

このように「金銭を要求しない」という合意があっても、不倫相手から慰謝料の負担を求められたら、相談者は支払わなければならないのでしょうか。伊藤真樹子弁護士に聞きました。

●合意は有効だが、効力がおよばないことも

——「今後お互いに金銭を要求しない」という合意は有効でしょうか。

お互いが真意に基づいて合意していれば、法的に有効です。ただし、必ずしも、すべての債権について請求権が否定されることにはなりません。

——どのような場合には合意の効力がおよばないのでしょうか。

たとえば、この相談者と不貞相手が、合意の数年後、偶然にも交通事故の加害者と被害者になるようなケースです。そのような場合でも、今回の合意によって、交通事故による損害賠償請求ができなくなってしまうとするのは不合理だからです。

——合意の効力がおよぶかどうかは、どのように決まるのでしょうか。

どのような請求まで含まれるかについては、この合意の解釈の問題となり、合意された経緯や当事者の意思などから合理的に解釈されることになります。

もともと、相談者と不倫相手が、相談者の妻に不貞関係の継続が知られて慰謝料請求された場合でも、求償権を行使しないという趣旨のことを話し合ったうえで、合意されていたのであれば、まさに合意の範囲内と言えます。

その場合は、求償されたとしても、相談者は支払う必要はないということになります。

反対に、たとえば、不貞期間中に相談者が不倫相手に貸したお金についてはすべて清算済みで蒸し返さないという合意にすぎず、不倫の慰謝料を想定した約束とはいえない場合には、慰謝料の支払について求償された際には支払いをしなければならない可能性が高いでしょう。

——相談者は離婚には至っていないようですが、それでも妻が不倫相手に慰謝料全額を請求することはありうるのでしょうか。夫の負担分は、あとで家庭内から出て行ってしまうように思えます。

実際に、離婚していない場合でも、不倫相手に慰謝料全額を請求することはあります。

たしかに離婚していなければ、実質的には夫婦の財布が一緒とも言えますが、理屈上はあくまで別の法的主体として、妻は夫に対して全額請求することも、不貞相手に全額請求することも、どちらも可能です。ただし、双方から全額もらうことはできません。

プロフィール

伊藤 真樹子
伊藤 真樹子(いとう まきこ)弁護士 仙川総合法律事務所
2008年に弁護士登録後、離婚や相続などの家事事件、債権回収などの民事事件を500件以上取り扱う。「何かあったらすぐに相談に行ける、身近な法律事務所」をモットーに法律事務所を運営。

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