女優の浅香光代さん(85)が、かつて不倫関係にあった大物政治家との間に、2人の「隠し子」をもうけていたと雑誌で告白し、話題になっている。
浅香さんの告白が掲載されたのは、1月22日発売の『婦人公論』。20代のころ、既婚の政治家と男女の仲となり、2人の子どもを出産したと述懐したのだ。相手の名前は明かしていないが、のちに自民党の重鎮となった人物(故人)とのことだ。
浅香さんは2人を出産後、その政治家とわかれて、別の男性と結婚。子どもたちには「お父さんは飛行機事故で死んだ」とウソをついてきたが、2年ほど前に真実を明かしたのだという。
芸能人や政治家のこうした騒動は、しばしば世間をにぎわせるが、実際には報道されていないケースもたくさんあるはずだ。そうした「隠し子」は法律上、どういった扱いを受けるのだろうか。たとえば、「相続する権利」はどうなるのだろうか。柳原桑子弁護士に聞いた。
●父親に「認知」されているかどうかがポイント
「『隠し子』という言葉は、実の父親側から見た一方的な表現といえるため、法律では、結婚していない男女間に生まれた子どもという意味の『非嫡出子』という言葉を使います。一般的には、『婚外子』という言葉も使われていますね」
柳原弁護士は「隠し子」という言葉について、このように断ったうえで、次のように説明する。
「非嫡出子と実の父親との法的関係は、その非嫡出子が実の父親に『認知』されているかどうかによって異なります。
認知されると、法律上の親子関係が成立します。そのため、戸籍の父親欄には、認知した父親の名前が載ります。また、扶養義務が生じるため、父親に対して養育費の請求もできます。
さらに、父親が亡くなった際、認知された非嫡出子は、他の子どもと同じように相続人になります」
それでは、認知されていない非嫡出子は、どうなるのだろうか?
「認知されていないと、実の父親との間に、法律上の親子関係は成立しません。したがって、戸籍の父親欄は記載がないままで、実の父親が亡くなっても相続人になれません」
●裁判所が「強制認知」をすることもある
そこまで決定的な違いをもたらす「認知」とは、そもそも何なのだろうか?
「認知とは、父子関係を認めることです。
父親が自ら役所に届け出る『任意認知』のほか、裁判所の調停・審判・訴訟において認知を認めてもらう『強制認知』があります。
強制認知は、たとえばDNA鑑定の結果などにより判断されます」
DNA鑑定が一般的になった結果、生まれてから長期間を経た後でも、父子関係を証明できるようになってきた。
それでは、遺産相続の際になって、急に「認知された子どもが見つかった」というようなケースは、どう扱われるのだろうか?
「遺産相続の際、亡くなった父親と一緒に暮らしていた人は、相続の手続きにあたって、父親の戸籍をさかのぼって調査することになります。
その調査過程で、父親が認知していた非嫡出子が判明したなら、その非嫡出子を無視することはできず、相続手続に加えなければなりません」