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福島大動画で炎上「テレビなら完全アウト」 wakatte.tvの学歴いじり、テレビは無縁だったのか?
非公開になった福島大学を取り上げた動画の冒頭シーン(wakatte.tvから)

福島大動画で炎上「テレビなら完全アウト」 wakatte.tvの学歴いじり、テレビは無縁だったのか?

学歴をテーマとするYouTubeチャンネル「wakatte.tv」が8月28日に公開した福島大学の動画が、批判を集めた。

学生が放射能研究を「福島ならでは」と挙げたのに対し、出演者が「福島大には触らせたくない」と発言。この場面がSNSで拡散したためだ。

動画はいったん非公開となった後、8月31日に「東日本大震災や原発事故の被害ならびに福島大学における研究や学びを揶揄する意図は一切ございません」とする注意テロップを加えて再公開された。しかし、9月1日には再び非公開となった。

動画には、福島大学の学生が出身高校名を明かして出演していた。

もしこれがテレビ番組だったら、放送できたのだろうか。一方で、テレビはこれまで「学歴を笑うこと」と本当に無縁だったのか。長年テレビ業界で働いてきた経験から考えてみたい。(テレビプロデューサー・鎮目博道)

●「テレビなら完全アウト」と感じた

「wakatte.tv」の動画をいくつか見た。「学歴いじり」を軸にした毒舌は、かなりどぎつく感じた。

受験戦争の只中にいて、「偏差値」の上下に一喜一憂する高校生なども視聴対象なのだろう。

私が見た動画では、その大学のポジティブな情報も紹介していた。受験生にはウケそうなコンテンツだとは思う。一方で、学歴差別とも受け取れる内容で、不快に感じる人も少なくないだろう。

こうした「学歴いじり」は、地上波に限らず、「テレビ」と名のつくメディアやABEMAなどの配信サービスでも、そのままでは許容されないのではないか。テレビマンの感覚からすると「完全アウト」だ。

●テレビなら福島の系列局にも相談したはず

福島大学を取り上げた動画は、執筆時点で非公開となっており、私は視聴できていない。

ただ、報道されているような発言があり、福島と原発の問題を笑いの文脈に置いているのであれば、テレビの基準で考えると極めて放送しづらい内容だ。

仮に笑いにする意図がなかったとしても、バラエティ番組で福島や原発事故にかかわる問題を題材にしようとすれば、間違いなく考査部門による厳しいチェックを受ける。

担当記者や福島の系列局にも相談し、内容によっては専門家の監修も受ける。そうした慎重なプロセスを経なければ、放送には踏み切れないはずだ。

●炎上した動画を「再公開」する危うさ

さらに驚いたのは、いったん炎上した動画を、テロップを加えて再公開したことだ。

「wakatte.tv」側は、東日本大震災や原発事故の被害などを揶揄する意図はないという趣旨の説明を加えたようだ。

しかし、この動画には福島大学の一般学生が出演している。炎上後に再公開すれば、出演した学生の身に危険が及んだり、誹謗中傷にさらされる危険性が高まることは容易に想像できる。

テレビ業界であれば、出演した一般人の安全やプライバシーへの影響をまず考える場面だろう。

さらに、問題となった発言について、テロップで「大学の難易度や就職状況に基づいたもの」と説明したという。

これでは「学歴をネタにしている」と自ら認めたようにも受け取られかねない。開き直りか、福島大学に喧嘩を売っていると捉えられても不思議はない。

批判を受けた後の説明として適切だったのか、疑問が残る。

●意外に少なかった? テレビの「低学歴いじり」

ここまで書くと、「お前たちテレビだって、これまでさんざん人の属性を笑いものにしてきたのではないか」という反論が聞こえてきそうだ。

それはその通りだと思う。

テレビはこれまで、性別や容姿をはじめ、さまざまな属性を笑いのネタにしてきた。そう考えれば、学歴を笑う番組があったとしても不思議ではない。

しかし、そう考えて記憶をたどってみると、意外なほど思い浮かばない。

たとえば、お笑い芸人などが「大学を出ていない」と自虐的に語り、自分の学歴を笑いのネタにすることはあっただろう。

しかし、特定の大学の偏差値が低いことを笑ったり、「この大学だからダメだ」と出演者をいじったりする企画がどれほどあったか。少なくとも私には、すぐには思い出せないのだ。

テレビでは「学歴いじり」、とりわけ「低学歴いじり」は、実はそれほど多くなかったのではないか。

●テレビ業界の頂点は「学歴」と無関係

なぜなのか。考えていて、一つの仮説に行き着いた。

テレビ業界のヒエラルキーの頂点にいるのは、良くも悪くもタレントや芸能人だ。

そして芸能界は、一般社会と比べても「どこの大学を出たか」が成功に直結しにくい世界である。

大学を出ていなくても大活躍している大物芸能人は大勢いる。裏方にも、学歴とは関係なく実績を積み上げてきた人がたくさんいる。

そのような人たちがいる前で、「高学歴だから偉い」「この大学だからダメだ」といった話を持ち出すことは、業界の人間として得策ではない。

それもあって、テレビは「低学歴を笑う」番組をそれほど作ってこなかったのかもしれない。

ただし、だからといって、テレビが学歴による序列付けと無縁だったわけではない。

●高学歴をありがたがるのも「学歴いじり」ではないか

むしろテレビは、「高学歴」「難関校出身者」を特別視する番組を数多く作ってきた。

クイズ番組などで「東大出身者」をことさらありがたがることも、広い意味では「学歴いじり」と言えるのではないか。

「偏差値の低い大学」を笑うのとは方向が逆なだけで、「学校にはランクがあり、上位の学校を出た人のほうが価値が高い」という学歴社会の価値観を強化している点では、地続きにも思える。

「良い」とされる側をことさらに持ち上げることで、結果として序列や差別意識を助長する。そんな構図はあると思う。

同じことは「家柄が良い」とされる人たちの特別な世界を取り上げる番組にも言えるかもしれない。そして、こうした傾向はむしろ強まっているように感じる。

YouTubeには、放送界におけるBPO(放送倫理・番組向上機構)のような第三者機関はない。また、多くの場合、テレビ番組のようなスポンサーへの抗議がコンテンツへの直接的な圧力として働く構造もない。

「迷惑YouTuber」の存在が象徴するように、テレビなら放送が難しいような差別的・攻撃的なコンテンツであっても、公開され、拡散されてしまいがちだ。

だからこそ重要なのは、出演者個人を誹謗中傷することではない。

問題のある表現や人権侵害に対しては、その問題点を具体的に指摘し、抗議の声を上げる。そうした積み重ねによって、コンテンツを取り巻く環境そのものを変えていく必要があるのではないだろうか。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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