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「幼児のそばで喫煙」の夫に激怒 「タバコの煙って虐待じゃないんですか?」
画像はイメージです(Ushico / PIXTA)

「幼児のそばで喫煙」の夫に激怒 「タバコの煙って虐待じゃないんですか?」

夫が自宅の居間で子ども(6歳)が近くにいるのもお構いなしに喫煙しているが、これは児童虐待に当たるのではないかーー。そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられている。

子どもは煙で目が痛いと言い続けており、相談者自身もタバコの煙で気分が悪くなるという。もし完全分煙ができないようなら、離婚も視野に入れているそうだ。

健康増進法の改正により、店舗などにおいては2020年4月から原則屋内禁煙となるが、自宅はその対象となっていない。

自宅での喫煙を理由に離婚することはできるのだろうか。また、子どもの前での喫煙は児童虐待に当たるのだろうか。佐田理恵弁護士に聞いた。

●自宅での喫煙そのものが必ず離婚事由に該当するとはいえない

ーー自宅での喫煙を理由に離婚することは可能でしょうか?

自宅での喫煙を理由に離婚することは、話し合いであれば問題はありませんが、訴訟となる場合、法定の離婚事由が必要です。

具体的には、(1)配偶者の不貞、(2)悪意の遺棄、(3)生死が3年以上不明、(4)強度の精神病で回復の見込みなし、(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由のいずれかが必要となりますが、今回の場合、(5)に当たるかどうかが問題となります。

結論から言えば、自宅での喫煙そのものが必ず(5)に該当するとは言えません。

ただし、現在、受動喫煙による健康被害は大きな問題にもなっていますし、配偶者が嫌がっているにもかかわらず、それを無視し、自宅内で吸い続けるとすれば、それが原因で夫婦関係が悪化し、婚姻関係が破たんすることは十分にありえます。その場合には、(5)に該当し、離婚が認められることとなると思われます。

●仮に児童虐待ではなくとも、子どもの健康には十分配慮すべき

ーー子どもの前での喫煙は児童虐待に当たりますか?

児童虐待防止法2条では「身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待」の4つが児童虐待として定義されています。

身体的虐待とは、「児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること」であり、子どもの前での喫煙が直ちにこれに該当するとは言えないと思われます。

しかし、受動喫煙による健康被害は明らかになっております。そして、子どもは自らの意思で受動喫煙を避けることは困難です。

にもかかわらず、漫然と受動喫煙の悪影響を受ける環境に子どもを置くことは、きわめて問題であると言えます。そのため、子どもの前での喫煙を児童虐待と同視する意見もあります。

ーー子どもの受動喫煙防止に関する法整備はどのようになっていますか?

東京都では、「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」が2018年4月1日に施行されました。

罰則はありませんが、保護者は家庭等において、子どもの受動喫煙防止に努めなければならず、子どもと同室の空間で喫煙をしないように努めなければならない(6条)とされています。

今後、子どもの受動喫煙防止の必要性は広く周知されていくこととなると思われます。それゆえ、喫煙するとしても、子どもが同じ空間にいない場所で吸うなど、子どもの健康に十分に配慮することが求められますし、それを無視するような行動には今まで以上に厳しい目が向けられていくのではないかと思います。

プロフィール

佐田 理恵
佐田 理恵(さだ りえ)弁護士 アストレア法律事務所
2007年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。離婚・相続・子どもの問題などを多く扱っている。

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