中高生の下着姿や裸体の自撮り画像がSNSを通じて拡散する被害が広がっていることを受けて、警視庁が全国の中高生と保護者ら1万世帯を対象にSNSの利用実態調査を行う方針を固めた。
読売新聞の報道によると、調査では、スマートフォンの保有状況やSNSの利用頻度、保護者が子どものSNSの利用実態を把握しているかといった点を調査する。さらに、実際に画像を送ってしまった被害者約500人から、送るまでのやりとりや、送った当時の心境を聞き取りして分析する。
子どもたちは、ツイッターやフェイスブックなどで知り合った相手から言葉巧みに要求され、画像を撮影し、相手にLINEなどで送信してしまうケースが多いという。その画像がさらにネット上で拡散する状況だ。警察庁の調べでは、2015年に裸の画像を撮影された18歳未満の児童ポルノ被害者は905人で、2000年の7倍に増加しているという。
画像が拡散するプロセスにはどんな法的問題があるのか。児童ポルノ被害に詳しい奥村徹弁護士に聞いた。
●「児童自身が画像を送ることを、立法者が予定していなかった」
ーー画像を送った子ども自身が罪に問われる可能性はあるのか?
児童自身が裸を撮って送るという行為は立法者は全く予定しておらず、児童ポルノ法では、被害児童自身を主体から除外していません。
ですから、法律上は、誰かに送る目的で撮影送信した児童には、提供目的製造罪(法7条3項)や提供罪(同条2項)が成立することになります。そのような裁判例もあります(神戸地裁平成24年12月12日、広島高裁平成26年5月1日)。
児童自身が実際に自撮り画像を販売していた場合に、児童を提供目的製造罪等で検挙した事例もあります。
もっとも、児童ポルノ法では描写された児童は「被害者」として扱われますし、児童を被疑者扱いすると捜査の端緒が得られなくなりますので、警察が児童自身を検挙することは稀です。
ーー児童に撮影させ、画像を送信させた者はどうなるのか?
児童に頼んで撮影・送信してもらった者は、法律上は、児童による提供目的製造罪(法7条3項)や提供罪(同条2項)の共犯(教唆・共同正犯)となるはずです。さきほどの裁判例もそのように判示しています
実務上は、児童を被害者扱いにするために、頼んだ方にだけ、姿態をとらせたとして製造罪(同条4項)が成立するという運用がされています。
ーーさらに、そういった画像をネット上に拡散することも罪に問われるのか?
児童から送られてきた画像を拡散した者は、公然陳列罪や提供罪(同条6項、最高懲役5年)になります。
画像を閲覧しただけでは罪になりませんが、自己の性的好奇心を満たす目的で画像を保存した場合には単純所持罪(同条1項)が疑われることになります。
児童による自撮りが児童ポルノの最大の供給源となってしまったのは、警察が法律上は児童自身が製造罪・提供罪になりうることを見逃して、児童に対する指導を怠ってきたからだと思われます。