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職場のPCで「アダルトサイト」閲覧、訪問先に「記録」が残ることでトラブルも
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職場のPCで「アダルトサイト」閲覧、訪問先に「記録」が残ることでトラブルも

福井県池田町は6月上旬、議会事務局長をつとめる50代男性のパソコンが、遠隔操作によって乗っ取られ、議会関係のデータを抜き取られた可能性があると発表した。

町によると、男性は6月3日昼ごろ、議会事務局のPCで、業務と関係ない「アダルトサイト」を閲覧した。午後3時ごろ、PCの画面に「あなたのパソコンはウイルスに感染しています」というメッセージと電話番号がポップアップ表示された。

男性はこの番号に電話をかけて、応答した男の指示を受けて「遠隔操作ファイル」をPCにダウンロード、インストールした。PCに入っていたのは、一般公開されているデータがほとんどだったが、漏えいすると問題となる情報が入っていた可能性もあるという。

町の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に、福井県警の調査が続いており、情報が流出したかどうか、不適切なサイト閲覧とポップアップ画面表示の関連などもはっきりしていないと説明した(6月8日段階)。

そもそも、職場のPCでアダルトサイトを閲覧するような行為は、法的に問題ないのだろうか。インターネット問題にくわしい深澤諭史弁護士が解説する。

●懲戒の対象になる可能性

「勤務時間中に、職場のPCでアダルトサイトを閲覧することは、犯罪でありませんし、直接何らかの法律に違反するとまでいうことは難しいでしょう。

しかし、就業規則違反(公務員であれば、法律や規則違反)ということで、懲戒の対象になる可能性はあります。

就業規則には通常、(1)就業時間中は仕事に専念しないといけない、(2)会社の設備は会社の業務のためだけに使い、目的外に使ってはいけない、といった趣旨の定めがあります。

職場のPCでアダルトサイトを閲覧することは、就業時間中に勤務に専念するという義務に違反していますし、職場の設備を業務以外に利用することになるので、就業規則に違反すると評価することができるでしょう。ただ、懲戒の可否と程度は難しい問題があります」

●「常に見られているかもしれない」と意識すべき

法的な問題以外にもリスクは存在している。職場のパソコンを使うときに気をつけるべきことはなんだろうか。

「職場のPCに限らないのですが、アダルトサイトは、閲覧者の後ろめたさなどを逆手にとったワンクリック詐欺などの温床となっています。安易にクリックしてページをすすめるべきではなく、架空請求などにも気をつけるべきでしょう。

また、法律から離れますが、事実上の問題として、アクセスの記録が残るということがあります。職場、つまり会社との関係でもそうですし、訪問先のウェブサイトとの関係でもそうです。

特に、『訪問先に記録が残る』という点には注意が必要です。ご存じでない方も多いのですが、インターネットは、ウェブサイトを訪問しただけで、訪問先に記録が残ります。職場のPCつまり職場の回線ですと、会社専用の回線だと外部に情報が公開されているものもあります。特に、大きな会社ではそうなっていることがあります。

そういう回線でアクセスすると、サイトの管理者に『●●社からアクセスがあった』と知られて、思わぬトラブルに発展しかねません。アダルトサイトのほか、反社会性のあるサイトなどの閲覧は控えるべきでしょう」

深澤弁護士はさらに次のように警鐘を鳴らしていた。

「インターネットは気軽にいろんなことができます。職場でアダルト本を広げるのは、かなり勇気がいることで、そんなことをする人は滅多にいないと思いますが、アダルトサイトの閲覧は、それよりもハードルを低く感じてしまうかもしれません。

しかし、今回のケースに限らず、インターネット上での行為は、リスクが大きいことも多いです。特に、先ほどの本のたとえでいえば、本を開いたことは記録に残ることは滅多にありませんが、インターネットでは記録に残らないほうが珍しいです。

常に見られているかもしれない、記録されているかもしれない、という意識が大事だと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

深澤 諭史
深澤 諭史(ふかざわ さとし)弁護士 服部啓法律事務所
明治大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。IT関連事件、ネット上の表現トラブル、刑事弁護、弁護士法令問題などを中心に取り扱う。主な著書に「弁護士の護身術」「まんが 弁護士が教えるウソを見抜く方法」「その「つぶやき」は犯罪です」、「弁護士のための非弁対策Q&A」「Q&A弁護士業務広告の落とし穴」「インターネット権利侵害Q&A」。

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