集英社の漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」編集部は9月4日、同誌で連載中の「BLEACH」の作者である久保帯人さんに対するネット上の悪ふざけについて、「法的措置も含めて厳しく対処せざるをえません」と警告するメッセージを公式サイトに掲載した。
編集部の発表によると、「まったく別人の肖像を、あたかも漫画家・久保帯人先生の肖像であるかのように思わせて紹介する行為」がネット上で横行しているという。グーグルの画像検索では、作曲家の佐村河内守さんやB’zのギタリスト松本孝弘さんなど別人の画像に「BLEACH 久保帯人先生」などとキャプションがついた画像が大量に表示される。
編集部は「こうした行為は久保帯人先生の人格権を侵害する行為」と非難している。別人の肖像に、本人であるかのような表記をつけて、ネット上で拡散する行為は、法的にどんな問題があるのだろうか。肖像権の問題に詳しい佃克彦弁護士に聞いた。
●「肖像権に近接した人格的利益」の問題
「まったく別人の肖像を、特定の人(Aさん)の肖像だとして紹介された場合、Aさん自身の肖像が世間にさらされたわけではありませんので、Aさんにとって、肖像権そのものの侵害は問題になりません」
佃弁護士はこう述べる。では、今回のケースは、法的に問題ないということだろうか。
「そうではありません。別人の肖像が、故意に『Aさん』だとして世間に流布された場合、Aさんとしては、とても不快に思うでしょう。このように他人を不快にする行為がまったく野放しに許されるとはいえません。過去にも、訴訟で争われた事例があります。
その訴訟の判決は、『読者がその写真をAさんだと思ってしまうような場合は、その写真がAさん自身の写真だったかどうかに関わりなく、Aさんの精神的平穏が害されることに変わりはない』として、『肖像権に近接した人格的利益』が侵害されたとし、Aさんの損害賠償請求を認めました。
久保さんのケースも、過去の裁判例に照らせば、『肖像権に近接した人格的利益』の問題となるでしょう。
そして、久保さんの写真をうっかり取り違えてしまったのではなく、故意の悪ふざけで、あえて他人の肖像を『久保さん』だとして世間に流布させていた場合には、久保さんの損害賠償請求が認められる可能性が高いと思われます」