弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. インターネット
  3. AIで生成したイラストがパクられて勝手に売られていた! やめさせるにはどうすれば?
AIで生成したイラストがパクられて勝手に売られていた! やめさせるにはどうすれば?
AI生成画像(でじたるらぶ / PIXTA)

AIで生成したイラストがパクられて勝手に売られていた! やめさせるにはどうすれば?

生成AIの登場によって、誰でも簡単にオリジナルのイラストがつくれるようになった。しかし、トラブルもある。弁護士ドットコムにも、つくったイラストが他人にパクられたうえに売られている、との相談が寄せられている。

相談者はAIで生成したイラストにセリフや効果音をつけてSNSに投稿していた。その内容を見知らぬ他人が無断で「画像まとめ集」としてネット上で販売しているという。

勝手に売っている人を訴えることはできるのだろうか。唐津真美弁護士に聞いた。

●場合によっては「著作物」に?

ーー他人がAIで生成した画像を無断で使用した場合は、著作権侵害にあたるのでしょうか。

「他人が作ったイラストを無断で使用したら、かならず著作権侵害にあたる」と思うかもしれませんが、著作権侵害が成立するためには、前提として、無断で使用された作品が「著作物」である必要があります。

著作権法では、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されています。AIは、それ自体が思想や感情を持っている存在ではありません。そのため、現時点での通説的な見解では、AIが自律的に生成した作品は「思想または感情を創作的に表現したものではなく、著作物には該当しない」とされています。

一方、写真の場合は、カメラやスマホ、プリンターなどの機械が直接的に生成しているにもかかわらず、現在の著作権法のもとでは著作物として保護されています。

その理由については「被写体の選択や、構図、撮影のタイミング、照度の調整などにおいて、撮影者の独自の創意と工夫がされているから」(※注)という説明がされています。人が自分の思想または感情を創作的に表現するにあたり、カメラを「道具」として使っている、と考えられているわけです。

同じように考えれば、人がAIを「道具」として利用して、自分の思想または感情を創作的に表現しているといえる場合は、生成された作品は著作物として著作権法で保護される、という結論になるでしょう。

人がAIを「道具」として使用したといえるか否かは、人の「創作意図」があるか、また、人が「創作的寄与」と認められる行為をおこなったか、によって判断されます。

生成AIでイラストをつくる場合、簡単なキーワードをいくつか入力するだけで、あとはAIに任せる場合もありますが、自分が意図するイメージ通りの画像を表現させるために指示〈プロンプト〉の方法を研究・工夫したり、参考となる画像を学習させたりするなど、作業を積み重ねる場合もあります。AIが生成したイラストに人が修正や調整を加えることもあるでしょう。

このように、人が思想または感情を創作的に表現するための指示を出したといえる場合や、AIの生成物に創作的な変更を加えた場合には、最終的なイラストに人が創作的に寄与をしているといえそうです。

相談者は生成AIで作成した画像に、後から台詞や効果音を加えています。ある程度の長さと創作性があれば、これらの台詞や効果音もそれぞれ別個の著作物として保護されている可能性もあります。

●著作物ではなくても、損害賠償請求が認められる可能性も

ーー相談者は、台詞や効果音を加えたイラストを他人に無断で「画像まとめ集」として販売されて困っています。やめさせることはできますか。

著作物を勝手に利用された場合、著作権者は侵害した人に対して無断利用をやめるように請求し、損害賠償請求をすることができます。

裁判所に訴えなくても、「画像まとめ集」を配信しているプロバイダーに権利侵害の申告をして、配信をやめるように求めることもできます。

ーー「著作物」ではなかった場合、販売をやめさせられないのでしょうか。

もちろん、生成AIが制作したイラストも、それに加えた台詞も効果音も著作物ではない可能性もあります。

この場合は、イラストを勝手に利用した行為について著作権侵害は成立しませんが、無断利用して利益を上げている人に対して、民法上の不法行為に基づいた損害賠償請求が認められる可能性もあります。

生成AIをめぐる著作権の問題については世界中で議論がされており、今も結論が出ているわけではありません。完成したイラストを見ただけでは、完成までにどのような形で人が作成に関与したかは明確ではありません。「#AIイラスト」というタグがついていても「これは著作物ではない」と安易に考えるべきではないと思います。

他人が公開している作品を無断で利用すること、特にその作品を利用して収益を上げることには、慎重になってほしいと思っています。

(注) 創意や工夫もない写真は著作物ではない、という見解が一般的とされている。

プロフィール

唐津 真美
唐津 真美(からつ まみ)弁護士 高樹町法律事務所
弁護士・ニューヨーク州弁護士。アート・メディア・エンターテイメント業界の企業法務全般を主に取り扱う。特に著作権・商標権等の知的財産権及び国内外の契約交渉に関するアドバイス、執筆、講演多数。文化審議会著作権分科会専門委員も務める。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする