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教師による子どもへの性暴力、「見て見ぬふりされた」6割超…「学校の闇」浮き彫りに
文科省で会見する石田郁子さん(2020年12月10日、弁護士ドットコムニュース撮影)

教師による子どもへの性暴力、「見て見ぬふりされた」6割超…「学校の闇」浮き彫りに

社会問題化する学校教師による教育現場での性暴力。どのような状況で性暴力がおこなわれているのか、被害当事者がアンケートを実施し、12月10日、その結果を文科省の鰐淵洋子政務官に提出した。

アンケートで判明した149件の性暴力のうち、教員が実際に退職したケースはわずか2件。また、性暴力に気づいた他の教師に「見て見ぬふり」をされたケースが6割を超えた。

アンケートを実施した石田郁子さんは、在校時から札幌市立中学の男性教師に性的被害を受けていたとして、教師と札幌市を相手取り、損害賠償訴訟を起こしているが、札幌市教育員会に被害を訴えても対応してもらえなかったという。

アンケートではまた、子どもが性暴力にあったとき、「何が起きたのかすぐには認識できない」実態も浮き彫りになった。石田さんは同日、文科省で会見し、「大人の介入」の必要性を指摘したうえで、文科省にはあらためて第三者委員会による調査や、教員の通報義務などの対策を求めた。(弁護士ドットコムニュース・猪谷千香)

●授業や部活の指導のどさくさにまぎれて体を触る

アンケートは今年7月、ネットで実施された。有効回答数は149件。加害者の教師の性別は、男性が97.3%と圧倒的に多かった。被害者は95.9%が女性だった。

「どのような性暴力を受けたか」という問いには、「体の接触」が最も多く24.8%、次いで、「性的な発言や会話をさせられる」が20.8%、「性的な行為(キスや性交など)をさせられた」というケースは12.7%だった。

体に直接触らない被害も、「ドライブに連れて行かれた」「飲み物を勝手に飲まれた」「部屋の写真を送るように言われた」などのケースがあり、多岐に渡った。中高生では「交際を求められた」として、被害が長期化する傾向がみられた。

被害にあった場所は、「学校の教室」が46.9%、次いで「教室以外の廊下や理科室、放送室など」が17.7%、「学校の体育館、プール、グラウンド」が15.6%と学校内が多かった。

「どのような状態だったか」という問いでは、「気づいたら、いつの間にか被害を受けていた」が35.1%、「授業や部活中に、指導をするふりをされ、どさくさに紛れて被害にあった」が18.9%、「密室で逃げられない状態」が12.2%だった。

石田さんは「たとえば、体育の授業で、跳び箱などを飛ぶときに、『補助してあげる』と言って、女子生徒の股間を触ったケースがありました。他にも、水泳では女子だけに平泳ぎをさせるなど、指導のどさくさに紛れた性暴力が多い。学校の暴力の恐ろしいところで、児童や生徒は防ぎようがありません」と話す。

●相談しても「まともにとりあってもらえない」

一方、目立ったのは、子どもに対する性暴力の特殊性だ。

「最初に被害を受けたとき、被害だと認識できましたか」という問いに対し、「認識できなかった」とする人は77.9%にものぼった。「認識できた」と回答した22.1%のうち、「相談できた」人は51.5%にとどまり、表面化した被害は「氷山の一角」だということがわかる。

また、「相談できた結果、どうなったか」という問いには、「他の教師や校長はまともにとりあってくれなかった」が27.0%、「信じてもらえなかった」(冗談だろうと笑われる、あの先生がそんなことをするわけがないと言われる)が21.6%と、まともに対応してもらえないケースが多かった。

学校の他の教師が被害に気づいていたか、という問いでは、「気づいていた」とした人が28.3%だったが、そのうち「見て見ぬふりされた」ケースが63.4%にものぼった。次いで「加害者の教師に脅されて、何もしてくれなかった」が7.3%、「加害者の教師にごまかされて、加害者を信用してしまった」が7.3%など、解決に対する消極的な姿勢がみてとれた。

これらのアンケート結果を受け、石田さんは教育行政の問題を指摘した。

「今、政府は懲戒処分を受けた教師の教員免許再取得の制度見直しを議論していますが、学校の性暴力の問題は、そもそも加害者の教師が処分を受けないケースが多いことにあります。

教育委員会は調査をするプロではありませんし、同じ自治体の職員を処分することに二の足を踏みます。懲戒処分をした教師からの取り消し請求を恐れるケースもある。児童生徒の安全のことは考えられていません。

今回のアンケートでも、149件の被害のうち、教員が退職したケースはわずか2件。それも、懲戒免職かどうかわかりませんでした。現在の懲戒処分の調査や判断を学校や教育委員会に委ねるだけでは、学校の性暴力はまん延したままです」

石田さんは9月にも文科省に対して、被害の実態に即したした対策を盛り込んだ政策提言を提出している。今回もあらためて、「第三者委員会の調査の義務化」や「他の教師の通報義務」を強調したという。

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