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ギャルソン社員、自社の「古着」転売で書類送検…中古品の売買に潜む「落とし穴」 
画像はイメージです(USSIE / PIXTA)

ギャルソン社員、自社の「古着」転売で書類送検…中古品の売買に潜む「落とし穴」 

古物業の許可を得ないまま、古着3点をネットや古着屋で「転売」したとして、警視庁が5月28日、会社員の男性を東京区検に書類送検した。

朝日新聞などによると、男性が売っていたのは「コム・デ・ギャルソン」の古着で、男性は同ブランドを展開する会社の社員だった。3点の転売以外にも、「2017年1月以降、計452点を転売して約216万円の利益を上げた」疑いもあるという。

フリマアプリを使っている人の中には、以前買った商品について「この商品を売れば、●円になります」という表示をみた記憶がある人もいるはずだ。

今回、書類送検された人の行為の何が問題だったのか、疑問をもつ人もいるだろう。ネット上にも「何が問題なのかわからん」といったコメントが相次いだ。

一体、何が問題だったのだろうか。鈴木義仁弁護士に聞いた。

●「営業」として「古物」を販売しているかどうか

当然のことですが、すべての場合が違法というわけではありません。

たとえば「デパートの商品券をもらったけど、使わない。現金にするため、金券ショップで買い取ってもらった」、「1、2回しか着ていないブランドものの子ども服をフリマアプリを利用して売った」ーー。

こうしたことは日常的におこなわれていると思います。これらの行為は別に違法ではありません。

ーーでは今回、なぜ書類送検となったのでしょうか。

「罪」に問われるかどうかは、「営業」として「古物」を販売しているかどうかという点です。金券ショップやブランド品買取・販売を店舗を構えておこなっているような場合が、「営業」として「古物」の販売をおこなっている典型的な例です。

「営業」としておこなう場合には、「古物営業」の許可を都道府県公安委員会(警察)から必ず得なければなりません(古物営業法3条)。

今回のケースは、無許可営業(古物営業法3条違反)にあたるとして書類送検されたのでしょう。この罪に問われた場合の刑は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金となります(古物営業法31条)。

なお、古物営業法の「古物」は、中古品はもちろん未使用の商品も含まれます(古物営業法2条1項)。自分で買って一度も使用していない新品状態のものも「古物」に該当します。

●反復継続していれば「営業」

ーー「営業」にあたるかどうかは、どのように判断されるのでしょうか。

「営業」にあたるかどうかは、反復継続して「古物」を販売しているかどうかで判断されます。1回だけの販売であれば、もちろん「営業」にはあたりません。複数回の販売であっても、自分が買って使わなくなったものを販売している場合には、反復継続性がないので「営業」にはあたりません。

第三者から継続して商品を仕入れ、仕入れた金額よりも高い値段で販売を継続しているような場合は「営業」にあたり、古物商の許可が必要だということになります。

今回、書類送検された男性の場合は、3点の転売以外にも、「2017年1月以降、計452点を転売して約216万円の利益を上げた」と報じられています。1年に100回以上仕入れて転売していたということになり、反復継続したものとして「営業」にあたるとされたものと考えられます。

たまたま高く転売できそうな商品をインターネットで購入し転売したとしても、反復継続性はないので、無許可営業にはあたらないでしょう。

しかし、購入即転売を繰り返し続けると、記事の男性ほどの回数ではなくとも「営業」にあたる可能性がありますので、転売目的での購入はほどほどにしないと、「無許可営業」として摘発される可能性もありますので、ご注意ください。

プロフィール

鈴木 義仁
鈴木 義仁(すずき よしひと)弁護士 法律事務所横濱アカデミア
元神奈川大学大学院法務研究科教授。前横浜市消費生活審議会会長。著書に「悪徳商法にご用心」(共著:日本評論社)、「訴える側の株主代表訴訟」(共著:民事法研究会)「くらしの法律相談ハンドブック(共著:旬報社)」

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