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コロナ禍で目立つ「倒産」や「廃業」、実は似て非なるもの どう違うのか?
画像はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

コロナ禍で目立つ「倒産」や「廃業」、実は似て非なるもの どう違うのか?

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、社会経済全体が深刻なダメージを受けており、報道などでは「倒産」や「廃業」といったワードが目に付きます。

最近では、東証1部上場企業のアパレル大手・レナウンの倒産が5月15日、大きく報じられました。東京新聞(5月20日)によれば、2020年の倒産件数は2019年を大きく上回る見込みだといいます。また、廃業などの件数も同様に増えるようです。

倒産と廃業、耳にするとどちらも企業に対してネガティブな印象を持ってしまいますが、具体的にどう違うのでしょうか。

●債務超過や支払不能の状態であるかどうかがポイント

「日常用語として普通に用いられていますが、法律上、『倒産』や『廃業』についての定義がある訳ではありません」

倒産法制に詳しい櫻町直樹弁護士はこう話します。もっとも、法律で一切使われていないというわけでもなさそうです。

「『倒産』については、破産法に『第十一章 外国倒産処理手続がある場合の特則』とあるように、表現として使われていることもあります」

では、「倒産」や「廃業」はどのような意味(定義)で捉えればよいのでしょうか。櫻町弁護士によると、東京商工リサーチのウェブサイトにある次の説明が参考になるようです。

「倒産」とは、企業が債務の支払不能に陥ったり、経済活動を続けることが困難になった状態を指す。「法的倒産」と「私的倒産」の2つに大別され、「法的倒産」では再建型の「会社更生法」と「民事再生法」、清算型の「破産」と「特別清算」に4分類される。「私的倒産」は、「銀行取引停止」と「内整理」に分けられる
(http://www.tsr-net.co.jp/guide/knowledge/glossary/ta_14.html)。

「廃業」とは、企業が事業を停止し、以降も再開をしないこと。債務を整理し任意で事業を休止することを指す(http://www.tsr-net.co.jp/guide/knowledge/glossary/ha_02.html )。

「このように、『倒産』とは、事業者が債務超過や支払不能に陥り、事業活動の継続が不可能あるいは困難になったことから、破産や民事再生、あるいは債権者(銀行等)との交渉によって債務を処理する手続きに入った状態をいいます。

他方、『廃業』とは、債務超過や支払不能ではないが、その時点での債務(借入れ、買掛金、公租公課等)を全て弁済し、事業活動を自主的(かつ恒久的)に停止させた状態をいいます。たとえば、代表者が高齢になり後継者もいない場合が廃業の典型です」(櫻町弁護士)

「倒産」と「廃業」でもっとも異なる点は、「債務超過や支払不能の状態であるかどうか」にありそうです。

「倒産」と聞けば、「会社がなくなる」というニュアンスで捉えがちですが、民事再生の手続きなどが含まれていますので、文字通り、企業が倒れて潰れてしまうとは限らないことになります。

一方、「廃業」については、会社はなくなりますが、経営破綻の意味合いは含まれておらず、「企業の任意引退」といった捉え方でよさそうです。

●倒産するにもお金が必要

お金の工面に困って倒産するにしても、「法的倒産」の場合には特に留意しておくべきことがあるようです。

「あまり知られていない点かもしれませんが、破産や民事再生等を申し立てる場合、裁判所に『予納金』を納付する必要があります。

予納金の額は、債権者の数、債務額等の個別事情によって異なってくる(裁判所が決定する)のですが、法人が破産する場合,数百万円あるいはそれ以上になるケースもあります。

ですので、『地獄の沙汰も金次第』ではありませんが、予納金を工面できないと破産等の申立てもできない、ということになってしまうのです」(櫻町弁護士)

お金がない状況でお金を求められるというのはなんとも厳しい話ですが、「そこまで備えておくのが経営」ということなのかもしれません。

プロフィール

櫻町 直樹
櫻町 直樹(さくらまち なおき)弁護士 内幸町国際総合法律事務所
石川県金沢市出身。企業法務から一般民事事件まで幅広い分野・領域の事件を手がける。力を入れている分野は、ネット上の紛争解決(誹謗中傷、プライバシーを侵害する記事の削除、投稿者の特定)。

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