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参院選「一票の格差」訴訟 参院でも「選挙無効判決」を出すべきか?
今回の参議院選挙のやり直しを求める訴訟を弁護士グループが全国で起こした

参院選「一票の格差」訴訟 参院でも「選挙無効判決」を出すべきか?

7月21日に投開票が行われた参議院選挙について「一票の格差」が存在するとして、2つの弁護士グループが翌22日、選挙のやり直しを求める訴訟を全国で起こした。今回、升永英俊弁護士のグループは全選挙区を対象として提訴した。

最高裁は昨年10月、最大格差が5.00倍だった2010年の参院選を「違憲状態」と判断し、「単に一部の選挙区定数の増減にとどまらず、都道府県単位の選挙区を改めることが必要」として、国会に選挙制度の抜本的な改正を求めた。その後、国会は選挙区定数を「4増4減」する法改正を行ったが、都道府県を基本とする選挙区の区割りは維持されたままだった。

今回の参院選では、議員1人当たりの有権者数は最も多い北海道が約115万人、最少の鳥取県は約24万人で、最大4.77倍の格差が生じているとされる。原告の弁護士グループは、このような人口に比例しない選挙区割りは憲法が保障する「正当な選挙」や「投票権の平等」に反していて、選挙は無効にすべきだと主張している。

昨年12月に行われた衆院選についても同様の「一票の格差」訴訟が提起されているが、各地の高裁の多くは「違憲状態」ではなく「違憲」だという判決を出した。さらに、広島高裁と広島高裁岡山支部ではついに、戦後初の「選挙無効」判決まで出している。

はたして、今回の参院選について、裁判所はどのような判決を出すべきだろうか。弁護士ドットコムに登録している弁護士に意見を聞いたところ、次のような結果になった。

●57%が「選挙は無効である」と答える

弁護士ドットコムでは、今回の参院選の「一票の格差」について、裁判所はどのような判決を出すべきか弁護士にたずね、以下の4つの選択肢から回答を選んでもらった。28人の弁護士から回答が寄せられたが、次のように、参院選挙は「違憲無効」とする意見が最も多かった。

(1)合憲である   →1人

(2)違憲状態である   →1人

(3)違憲であるが、選挙無効とまでは言えない   →10人

(4)違憲であり、選挙は無効である   →16人

このように、回答した弁護士の約57%にあたる16人が<違憲であり、選挙は無効である>と答えた。次のような意見が見られた。

「既に前回の最高裁判決で『違憲状態』『都道府県単位の選挙区を改めることが必要』と判示していたにもかかわらず、国会はそれを無視し、最大4.77倍もの格差を放置して選挙に突入したのですから、最高裁は堂々と『違憲・無効』判決を下すべきです」(秋山直人弁護士)

「日本の憲法は、通常裁判所に違憲審査権を与え、司法権優位の憲法構造を採用しているにもかかわらず、国会は裁判所の判断を軽視する傾向があります。かかる誤った考えを打破するためにも、即時の違憲無効判決をすべきです」(中村晃基弁護士)

●「違憲であるが、選挙無効とまでは言えない」という意見は36%

一方、回答者のうち約36%にあたる10人の弁護士が、<違憲であるが、選挙無効とまでは言えない>という意見を支持した。その理由は、次のようなものだ。

「違憲は、当然といえば当然。それを貫くと、本来、選挙も無効となるはず。しかしながら、選挙無効の影響は大きく、他の憲法の規定に抵触しかねないし、他の憲法上の権利利益を侵害しかねない。また、個人的には、国家財政が逼迫するなか、やり直しに割く予算の問題を重視せざるを得ない。よって、選挙無効としたいところであるが、やはり選挙無効までは困難と考えざるをえない」(高岡輝征弁護士)

<違憲状態である>という回答した弁護士は1人だった。次のような意見があった。

「一定の是正措置が講じられており、違憲状態の判決がなされることにより更なる是正が期待することができることを考えると、是正に必要な合理的期間が経過しているとはいえず、違憲状態にとどまるものと考えます」(伊藤勇人弁護士)

なお、<合憲である>と答えた弁護士は1人でコメントでの回答は寄せられていない。

「一票の格差」をめぐっては、参議院に道府県代表という側面などがあることから、先日の衆議院の裁判とは違った判決が下されるかもしれない。しかし、どのような結果になるにせよ、憲法の精神に基づいた抜本的な対策が必要だろう。

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