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「自転車保険」義務付け条例相次ぐ…「リスクヘッジの手段として必須」弁護士が指摘
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「自転車保険」義務付け条例相次ぐ…「リスクヘッジの手段として必須」弁護士が指摘

自転車を利用する人に保険加入を義務づける自治体が相次いでいる。大阪府で7月1日から条例が施行され、滋賀県でも10月から導入される。すでに義務付けている自治体もある。

大阪府では、「自転車利用者は、自転車損害賠償保険等に加入しなければならない」とする条例の適用が始まる。府内で自転車を使う場合は、府民かどうかを問わず加入は義務となる。子どもの場合は、保護者が加入させる義務を負う。

自転車保険を義務化に踏み切る自治体が相次いでいる背景には、どんな事情があるのか。自転車保険に加入しておくメリットはあるのか。交通事故と保険の問題に詳しい好川久治弁護士に聞いた。

●高額賠償が相次いでいる

「まず、自転車が関与する事故の件数が、依然として多いということがあげられます。

警察庁の調べによると、2015年の自転車が関与する交通事故件数は9万8700件で、交通事故全体の約18.38%を占めています。このうち、自転車の責任(過失)が大きい『第1当事者事故』は1万5929件で、自転車関与事故の16.13%を占めています。

ここ数年、自転車の運転ルールに対する啓発活動が広まり、悪質な運転を繰り返す自転車運転者に対する安全講習を義務づける道交法改正の影響などもあって、自転車事故の件数は低下傾向にありますが、それでもかなりの数にのぼっています」

好川弁護士はこのように述べる。裁判で争われたケースはどうだろうか。

「自転車事故に関しては、過去に高額賠償を認める判決がいくつか出ています。

(1)自転車運転者が片手にペットボトルを持ったまま下り坂をスピードを落とさずに走行し、信号機のない交差点で横断歩道上を横断していた歩行者(38歳女性)に衝突し、女性が脳挫傷等の傷害を負って2日後に死亡した事故(賠償総額約6778万円、東京地裁平成15年9月30日判決)

(2)自転車運転者が赤信号を無視して交差点に進入し、交差道路を横断していた歩行者(55歳女性)と衝突し、女性が頭蓋内損傷の傷害を負い、10日後に死亡した事故(賠償総額約5437万円、東京地裁平成19年4月11日判決)

(3)歩道を進行していた自転車運転者(高校3年生)が幹線道路を横断する際、自転車横断帯の十数メートル手前で車道を斜めに横断しようとしたところ、車道を進行してきた24歳会社員運転の自転車と衝突し、会社員が頭蓋骨骨折等の傷害を負い、右上下肢機能全廃等の後遺障害が残った事故(賠償総額約9266万円、東京地裁平成20年6月5日判決)

(4)スイミングスクールからの帰宅途中の小学校5年生の子どもが、坂道を自転車で下っている際、歩行者(62歳女性)と正面衝突し、女性が頭蓋骨骨折等の傷害で一生涯常時介護を要する植物状態の障害が残った事故(母親に対して賠償総額約9520万円、神戸地裁平成25年7月4日判決)

●「自転車は交通ルール遵守の意識が低い」

「自分は安全運転をしている」と考えている人でも、保険に加入しておいた方がいいのか。

「自転車は免許制度がなく、子どもからお年寄りまで気軽に乗車できるため、交通ルールを厳格に遵守するという意識が一般的に低いです。また、自転車による加害事故を想定して保険に加入することも、自動車と比べるとまだ不十分です。

しかし、一旦事故が起きたときに取り返しがつかない高額賠償を請求されることや、被害者の救済のことを考えると保険への加入はリスクヘッジの手段として必須といえるでしょう。

特に、小さいお子さんを抱える親御さんや、お孫さんを預かっているおじいちゃん、おばあちゃんなら、お子さんが自転車に乗って他人に怪我をさせると、お子さんに代わって損害賠償責任を負わなければなりません。『自分は安全運転しているから大丈夫』と言っていられませんので、注意が必要です。

自転車事故を含む個人賠償責任保険は、自動車保険、火災保険、傷害保険の特約や、クレジットカード会社の付帯サービス、また単体の保険としても販売されていますので、確認してみてください」

好川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

好川 久治
好川 久治(よしかわ ひさじ)弁護士 ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。

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