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「出張中は一日三食駅弁です」 駅弁とB級グルメに魅せられた弁護士の"偏愛"
北海道と愛知と鳥取の駅弁を持つ小沢一郎弁護士(2024年10月/東京・千代田区丸の内/弁護士ドットコム)

「出張中は一日三食駅弁です」 駅弁とB級グルメに魅せられた弁護士の"偏愛"

出張や旅行で食べた駅弁やB級グルメを法律事務所のブログに10年以上書き続ける弁護士がいる。その入れ込みようは「駅弁を食べるため、わざわざ遠方の仕事を選ぶ」ほど。

ただ、新型コロナの影響や司法手続きのIT化が進む中で、弁護士の仕事から「移動」が減りつつある。

京都に事務所を構える小沢一郎弁護士は、そのような便利な恩恵も「駅弁好きにとっては死活問題です」と話す。

駅弁をつつきながら、弁護士の駅弁愛を聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・塚田賢慎)

●「駅弁ブログは一切仕事に結びつきません」

小沢弁護士は、外資系の生命保険会社勤務などを経て、弁護士資格を取得。今は相続分野の案件に力を注ぐ。

依頼者からの法律相談に対応するだけでなく、メガバンクや不動産デベロッパーから頼まれて、事業承継や遺産分割の講演やセミナーに足を運ぶ。

画像タイトル 「山陰鳥取 かにめし」の容器

小沢弁護士の事務所のブログでは、相続分野などの法的なテーマを発信しているが、同じブログの中で駅弁やB級グルメを2013年から紹介してきた。

「自筆証書遺言作成のワンポイントアドバイス」「土地国庫帰属法とは」などの記事にまじって、「かにさばしじみのもぐり寿司@松江駅」「JR九州×TVアニメ鬼滅の刃コラボ特製弁当」といった記事が幅をきかせている。

とはいえ、駅弁ブログは仕事にはまったく結びつかないという。

「相続問題や離婚問題で揉めてヘトヘトにお疲れの方が、『駅弁を好きな弁護士なら依頼しましょう』とは思いませんよね。ブログを読んだ人から仕事が入れば駅弁やB級グルメを堂々と経費にしますよ(笑)。そんなことは、この10年で一度もありません」

画像タイトル 「山陰鳥取 かにめし」カニ爪がついてくる

サイトのウェブデザイナーからは「お客さまに読んでもらっても意味のないことを事務所のブログに書かないで」と小言を言われながらも、「好きだから」の一点張りで書き続けている。

●遠くの仕事が入ると「やったー」

「お腹が減ってなくても買ってしまう」「出張の移動中のために1個、ホテルで晩酌の肴にするために1個、翌朝の食事のために1個。一度に2つ3つ買うこともある」。

そんなスタイルで駅弁を買う小沢弁護士。今回の取材で訪れた東京駅の催事場も「関東の出張では必ず寄る駅弁の狩場」だという。

この日は初めて味わう「天下とり御飯」を手にした。

「これは愛知県の松浦商店が調製元(駅弁のメーカー)で、名古屋の元祖あんかけスパゲティヨコイとのコラボ商品です」

画像タイトル 小沢弁護士と取材班が食べたのは「天下とり御飯」、「山陰鳥取かにめし」、「鰊みがき弁当」

公園で弁当を頬張りながら、よどみなく語られる駅弁愛。駅弁の「掛け紙」はコレクションしている。

最近では1500円や2000円で売られることも多く、通常の弁当と比べて高額な印象だ。それでもなぜ駅弁にひかれるのか。

「電車や新幹線の移動が好きなことはもちろん、駅弁の魅力は、その地方の特産品が駅弁の一つに凝縮されていることにあります。街に出て飲食店で名物を一通り食べようとするとそれなりのお金も時間もかかりますが、駅弁だとお手頃です。駅弁と同じマーケットはコンビニ弁当などではなく、飲食店ではないかなと思います」

画像タイトル 天下とり御飯。「名古屋の駅弁はボリューミー。これはミラカンですね」

西日本を中心に北海道から鹿児島まで回り、駅弁の記事は今月10月時点で合計650件を数える。1つの記事で2〜3個の駅弁を紹介することもあり、食べた駅弁の数は把握できていない。なお、B級グルメの記事はおよそ860件だ。

講演やセミナーでの地方行脚は新型コロナ流行で減少したが、多いときには年間100件を超えていた。クライアントには「一番遠くのお仕事をお願いします」と頼み、わざわざ遠方を選んでいたという。

画像タイトル 初めて食べる駅弁に舌鼓を打つ

弁護士として取り組む相続分野の事件でも、相手方の居住地にある家庭裁判所を陸路で訪れることもあり、そのたびに京都から電車に揺られて、各地の駅弁やご当地グルメを腹におさめてきた。

オンラインでの仕事が増えた今では、仕事ではなく、オフの時間に「駅弁旅行」を堪能している。「最近も青春18きっぷを使って、沼津、広島、岡山、九頭竜湖、紀伊半島を回ってきました」

●変わりゆく駅弁業界、変わりゆく法曹界、そして変わらぬもの

駅弁業界は調製元の廃業や買収が続き、小沢弁護士は食べられなくなった駅弁に思いを馳せる。

「昔は全国の駅弁もさまざまな調整元が群雄割拠していたのが、大手に収斂しています。駅弁は基本的に保存食で、味が濃いため、大手が買収したとしても微妙な味わいの再現に困ることはないかと思います。ただ、実際に食べられなくなった駅弁はたくさんあります」

5年前、担当事件のため、山口県の家庭裁判所に通い詰めだった。新幹線で新山口駅に乗り換える際に駅弁をよく買った。

「新山口駅の駅弁は全種類食べて、さらにもう一周食べたことがあります。当時、倒産した山口の小郡駅弁という調整元を広島駅弁が買収したんです。新山口駅の駅弁が広島駅で買うことができる駅弁とほぼ同じになったのでよく覚えています」

調製元は駅弁の販路を駅だけでなく、催事や空港の「空弁」にも広げている。

画像タイトル 駅弁と弁護士の未来に思索をめぐらせる

駅弁のあり方は変わりゆく。そして、法曹界もIT化が進み、弁護士の仕事も変わりつつある。書面主体からデジタルデータの活用に切り替わり、裁判手続きにもオンラインでのやりとりが導入された。

「弁護士の仕事は、BtoBでは、IT化で省力化されていくでしょうね。面談もネットで済ませますし、ペーパーレスになります。BtoCとなると、個人のお客さまは 直接面談したいというニーズが一定数あります。対個人の仕事は、そんなに劇的に変わることはない気がします」

変わっていくものと、変わらないもの。名古屋駅最古の駅弁「天下とり御飯」の特別コラボ。進化を感じる。空になった容器を見つめながら「56歳。いつまでもゴーイングマイウェイですよ。ご馳走様でした」と手を合わせた。

●小沢弁護士が選ぶ「珠玉の駅弁5選」

画像タイトル 駅弁弁護士が推す「鰊みがき弁当」(弁護士ドットコム撮影)

【()内は調製元・9月時点の販売価格・購入できるエリア】

(1)鰊みがき弁当(函館ミカド・1180円・函館駅ほか)

「ほろほろの鰊の甘露煮、味付け数の子は酒の肴によし、ご飯のお供によし。ワカメの醤油煮はニンニクと唐辛子を隠し味につかった一品」

(2)シウマイ弁当(崎陽軒・950円・横浜駅ほか)

「日本一売れている駅弁。帆立貝柱配合のシウマイ、蒸気で炊き上げたご飯は冷めてもウマい。筍煮とまぐろ漬け焼きはビールのお供」

(3)鱈めし(ホテルハイマート・1400円・直江津駅ほか)

「棒鱈を水で2日間戻し竹籠を使い6時間煮込まれた鱈の甘露煮は骨まで柔らかい。横には焙られたタラコが添えられ鱈の親子駅弁にもなっている」

(4)あなごめし(うえの・2700円※レギュラーサイズ・宮島口駅ほか)

「脂がのった上位20%の穴子を使うあなごめし。本店は行列必至だが、駅弁だとお手軽にあなごめしを味わうことができる」

(5)ながさき鯨カツ弁当(くらさき・1400円・長崎駅ほか)

「ご飯の上に鯨のそぼろを敷き、その上に鯨カツと鯨の竜田揚げがのった鯨尽くしの駅弁」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

小沢 一郎
小沢 一郎(おざわ いちろう)弁護士 弁護士法人オールワン法律会計事務所
同志社大学大学院司法研究科修了。 外資系生命保険会社等を経て弁護士・税理士登録。メガバンクや外資系生命保険会社などで資産承継、事業承継、不動産経営等の講演会や研修を務める。駅弁とB級グルメについて書かれたブログはこちら〈https://allone-law-acc.com/category/blog〉

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