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大飯原発再稼働に「NO」を突きつけた地裁判決――関電は「無視」してもいいのか?
震災以降、原発再稼働の是非をめぐる議論が続いている

大飯原発再稼働に「NO」を突きつけた地裁判決――関電は「無視」してもいいのか?

大飯原発3号機・4号機の「原子炉を運転してはならない」――。関西電力大飯原発(福井県)をめぐり、5月に福井地裁が下した判決は、日本社会に衝撃をもたらした。

しかし、関電はこの判決を不服として名古屋高裁に控訴。さらに「判決は確定していない」として、控訴審(第2審)の判決が出る前であっても、条件が整えば再稼働をするという方針を表明している。また、菅義偉官房長官は、原子力規制委員会が安全性を確認した原発を再稼働させるという政府方針について、「全く変わらない」としている。

5月の福井地裁判決は、このように電力会社や政府から無視されても良いものなのだろうか。住民側弁護団の事務局長をつとめる笠原一浩弁護士に聞いた。

●判決は未確定だが・・・

「たしかに今回の福井地裁判決は、関電が控訴したため確定しておらず、法的な強制力はありません。また、この裁判は、国を被告とした行政訴訟ではなく、民間会社である関西電力を被告とした民事訴訟です。

しかし、この判決は、単に大飯原発の安全性に疑問を投げかけるのみならず、国の規制基準や安全審査に対しても、重大な疑問を投げかける内容です。中でも、次の4点は特に重要で、原発事故を防ぐにあたって、これらの疑問を国が無視することは許されないでしょう。

(1)いまだに事故原因が究明されていないこと

(2)地震の想定に関して誤りが重ねられてきたこと

(3)外部電源や主給水ポンプといった冷却にとって極めて重要な設備が、基準地震動に満たない地震でも損壊しうること

(4)使用済み核燃料は堅固な設備によって守られていないこと」

●「事故原因の究明」と「地震想定の見直し」が先

国は、これらの指摘に対して、どう答えるべきだろうか?

「(1)については、福島第一原発事故において、地震がどこにどのような損傷をもたらし、それがいかなる事象をもたらしたかがきっちり判明していません。

(2)については、ここ10年足らずの間に『想定を超える地震動』が5回も、4つの原発に到来しています。

少なくとも(1)事故原因・事故発生の詳細なメカニズムや、(2)地震の想定が誤ってきた原因が解明されるまでは、安全審査を中断すべきです。さらに、(3)(4)の問題を抱えている原発は、運転を認めてはならないでしょう」

笠原弁護士はこのように強調し、再稼働を急ぐ動きを批判していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

笠原 一浩
笠原 一浩(かさはら かずひろ)弁護士 みどり法律事務所
1976年 福井市生まれ 98年 京大理学部卒(地球物理学専攻) 1998-2001年 社会福祉法人共生福祉会(通称わっぱの会)職員 2004年 福井弁護士会登録 06年 みどり法律事務所開設 日弁連 公害対策・環境保全委員会 エネルギー・原子力前部会長

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