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プールの更衣室、異性の子どもは「何歳まで」入室許される?
写真はイメージ(Fast&Slow / PIXTA)

プールの更衣室、異性の子どもは「何歳まで」入室許される?

夏も真っ盛りで子どもをプールに連れていく機会も増えてきた。

ただ、親と子どもの性別が異なり、まだ1人で上手に着替えができない場合、どうしたものか。SNS上には「何歳まで息子(娘)を女性用(男性用)更衣室に連れていってもよいのか」といった疑問が少なくない。

銭湯などの公衆浴場では、男女混浴制限年齢が「7歳以上不可」とされているが、プールやスポーツ施設の更衣室はどのように考えればよいのか。

一部自治体のルールやスイミングクラブの考え方、大型プール施設の取り組みを紹介する。

●「6歳の娘が小学生くらいの男子を気にして着替えていた」足立区に届いた声

厚生労働省は「公衆浴場における衛生等管理要領」を2020年12月に改正し、銭湯などの男女混浴制限年齢の目安を「10歳以上不可」から「7歳以上不可」へ引き下げた。

これを受けて、たとえば東京都では、2022年1月1日から7歳以上は「混浴不可」とされている。プールなどスポーツ施設の更衣室はどうか。

東京2020の競泳競技の会場となった「東京アクアティクスセンター」がある東京都は「統一的なルールはない」と回答した。それぞれの施設の指定管理者でルールを決めているという。

「ただ、基本的には東京都の公衆浴場条例にもとづき、7歳以上不可とされているところが多いと思う」(生活文化スポーツ局スポーツ施設部)

23区の自治体ではどうか。

世田谷区では、区の公衆浴場法施行条例改正によって、2022年4月1日から公衆浴場における混浴の制限年齢が10歳から7歳に引き下げられ、これに準じて、同日から「区立スポーツ施設の水泳場では利用者間のトラブル防止のため、異性の更衣室を利用できるお子様の年齢を小学1年生以下とした」という。

もっと前から引き下げがおこなわれた区もある。足立区では、2021年11月1日から「おおむね小学校中学年まで」から「6歳まで」に引き下げた。

きっかけは区民からの声。区スポーツセンターのプール利用者から「小学校中学年位の男の子が5人、付き添いの母親と一緒に女子更衣室を利用していました。娘は年長6歳ですが、すごく気にしながら着替えていました」という年齢引き下げ提案を受けてのものだ。

紹介したのは一部の自治体だが、「小学1年生以下(6歳以下)」という「公衆浴場」の基準で運用されていることがわかる。

⚫︎スイミングクラブに統一ルールはない

では、民間ではどうだろうか。

画像タイトル 写真はイメージ(Fast&Slow / PIXTA)

全国1043のスイミングクラブ(7月4日時点)が加盟する「一般社団法人日本スイミングクラブ協会」には、年齢に関してガイドラインはない。

協会の丁子昇事務局長によると、「クラブごとに判断して対応している。概ね一般的な銭湯(公衆浴場)と同じように運用しているのではないか」という。

「1年生にもなれば学校でも各自でやっていることもあり、保護者の介助は必要ではないという話になるかと思うが、6歳未満の幼児の場合に、個人の能力にもバラつきがあるため、『何歳まで』と線引きするのは難しい。

障害のあるお子さんもいるので、基本的には介助がどの程度必要であるか検討したうえで判断される。必要以上の保護者の入室は避けるのが一般的。介助が必要であれば、介助者のほうの更衣室に連れていくというのが通例かと思われる」

保護者のほうが子どもの性別のロッカーに入室して着替えを手伝うような場面もあるといい、「どちらかと言うと、女性の保護者が男性用ロッカーに入室することは寛容的ではあるが、逆の場合はまず理解されない。そのため、そうした場合はスイミングのスタッフや同じコースに通う知り合いの保護者にお手伝いをお願いすることで成り立っていると考えられる」(丁子事務局長)

レジャー施設の「東京サマーランド」(東京都あきる野市)では、2022年1月1日から都の基準にもとづき、更衣室の使用年齢制限は6歳までとしている。

画像タイトル 東京サマーランド(公式サイトから)

また、年齢制限にひっかかる親子などのために、『みんなの更衣室』を設けている。

「トランスジェンダーの方、お身体の不自由な方等にご利用いただけます。なお、場所も比較的目立ちにくい場所にご用意しております」(東京サマーランド)

公共のプールも民間のプールも概ね銭湯と同様の基準で年齢制限を設けていることがわかった。

「みんなの更衣室」のような施設がないケースではどうすればよいか。SNSでは子を持つ親から「家から水着のまま移動させる」などの意見がみられる。

着替えの心配だけでなく、変質者の存在を懸念し、1人にさせたくないという不安の声も目立った。

⚫︎「男女の性別は身体的特徴で取り扱う」厚労省の新たな通知による影響は?

なお、厚労省は今年6月、LGBT理解増進法の施行を受けて、公衆浴場の共同浴室では、これまで通りに「身体的特徴」で男女を取り扱い、混浴させないことを確認する通知を全国の自治体に出した。

取材先には、更衣室の「男女」をわける基準も確認してみた。

「『プール等取締条例』に基づき男女別の更衣室とトイレを設けるとともに、公衆浴場等の取扱いに準拠して身体的特徴(身体的性差)により男女を区別しております。

なお、今後、東京都の『プール等取締条例』の改訂や保健所からの指示等があった場合は、速やかに対応するよう努めてまいります」(東京サマーランド)

「区立スポーツ施設の水泳場の更衣室につきまして、男女は身体的な特徴をもって判断し、利用していただいております。ただし、性的少数者の方からご相談いただいた場合は、利用状況に応じて『家族介助更衣室』や『だれでも更衣室』等をご案内させていただいております。なお、6月の厚労省からの通知を受けての変更はありません」(世田谷区)

足立区も世田谷区同様に「現時点で変更する予定はありません」とした。

スイミングクラブでも性同一性障害の人のロッカー使用について、対応方法に悩んでいるところもあるという。

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