賃貸物件に住んでいる場合、子どもが産まれたら、大家さんや管理会社に報告をする必要があります。しかし、出産を理由に退去を求められて、泣く泣く応じるケースもあるようです。
そのような場合、大家さん側は「騒音トラブルの原因になる」と主張することが多いです。 また、賃貸契約の際の重要事項説明書に「子ども不可」の特約が書かれているケースもあるようです。
出産を理由に退去を求めたり、そのような規定を賃貸契約書に設けることは法的に問題ないのでしょうか。不動産の法務にくわしい白土文也弁護士に聞きました。
●「子ども不可」の特約があっても「立ち退き」許されない
——賃貸契約の際の重要事項説明書に「子ども不可」の特約をあらかじめ書くことは違法ではないのでしょうか。また、「子ども不可」ということが賃貸契約に含まれていなかった場合、あとから子どもが生まれたことを理由に立ち退きを求めることは違法ではないのでしょうか。
結論から言えば、「子ども不可」の特約は、無効とされる可能性が高いでしょう。
たしかに、民法や借地借家法に反しない限り、契約当事者は、契約内容を自由に決めることができます。しかし、子どもを産むことは人として自然のことであり、「子ども不可」の特約はこれを否定するものですので、公序良俗違反(民法90条)と考えられるからです。
そのため、「子ども不可」の特約が、賃貸契約や重要事項説明書に記載されていなかった場合はもちろん、記載されていた場合であっても、あとから子どもが生まれたことを理由に立ち退きを求めることは認められません。
ただし、「単身者専用」として、賃借人だけが居住できることを特約に定めているケースもあり、そのような契約にもかかわらず賃借人が賃貸契約の締結後に賃貸人に無断で同居人を住まわせ、その後に出産するとなれば、契約違反で解除が認められる可能性は高いでしょう。
——出産後に子どもの泣き声などでトラブルになりそうですが、それでも「立ち退き」を求めることはできないのでしょうか。
「騒音トラブルの原因になる」ことを気にする賃貸人の気持ちも理解できますが、子どもの騒ぎが社会通念上受忍できる限度を超えており、かつ、それを放置するなど、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたと評価することができる事実があればともかく、「子どもの泣き声がうるさい」という程度のことを理由に立ち退きを求めることはできないと考えます。