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「めった刺しにして殺す」インフルエンサー候補を襲った2万通の嫌がらせ 港区議・新藤加菜さんの戦い
港区議に当選した新藤加菜さん(2023年4月27日、弁護士ドットコムニュース)

「めった刺しにして殺す」インフルエンサー候補を襲った2万通の嫌がらせ 港区議・新藤加菜さんの戦い

選挙期間中の候補者に対する暴力や暴言、誹謗中傷が相次いでいる。4月23日、東京・港区議選で当選した新藤加菜さん(29)もターゲットとなった一人だ。1週間で2万通もの嫌がらせメールが届き、中には殺害を予告するものもあった。

ライブ配信者だったため、ネットの誹謗中傷には耐性はあったという新藤さん。「昔から『お前死んで欲しい』などひどいものもありましたけど、ネットは好きですし、悪口を書かれても毒をも楽しんでやろうくらいの気持ちでいました。でも選挙期間中に受けた誹謗中傷はそれまでとは性質が違いましたね」と語る。

●1日、数千件の誹謗中傷メール

今から13年前の2010年、高校生だった新藤さんはニコニコ生放送でライブ配信をスタート。留学や大学進学、就職を経て、インフルエンサーとして活動するようになる。その後、NHK党広報担当、日本維新の会のSNSスタッフを経て、無所属で港区議会議員選挙へ立候補した。

初めての殺害予告は、4月1日の夜だった。新藤さんのHPの問い合わせフォームから数秒、数分おきに数時間のうち数千件ものメールが届いた。内容は「ナイフでめった刺しにして殺す」など恐ろしい内容だった。しかも翌日も同じように夜間、数千件のメールが届くようになった。文面は毎日違うものだったが、同じ人物が書いたことが疑われる内容だった。

実際に届いた脅迫メール 実際に届いた脅迫メール

選挙スタッフはいるが、問い合わせフォームには有権者からの声も届くため、必ず新藤さんが内容を確認していた。

「ネットでの活動は長いですから、多少のことは慣れています。でも、ここまではっきりと殺害予告を受けたことは初めてでした。警察には相談しましたが、2、3日は家から出られませんでしたし、怖くて泣いていると、同居する犬たちも心配そうにしていました」

深夜のメールは、1週間続いた。告示日は4月16日。選挙直前の大事な時期だったが、1週間は駅前にたつこともできなかった。

「それが何より悔しかったですね、活動できなくなりますから。もし駅前に立ったら、一票が入るかもしれない。警察は何かあってからでないと動いてくれませんから、自衛するしかありません。でもナイフでなくて、硫酸をかけられたらどうしよう、とか……」

それでも支援者の応援もあり、1週間後には街頭に立った。友人や格闘技世界チャンピオン、護身術のコーチなどが新藤さんを守るように側にいてくれたという。

警察では被害届も受理されたが、メールの送信元のIPアドレスは国外で、送信者はまだ特定に至っていない。

●「中傷うけた経験を区政にいかしたい」

港区議に当選した新藤加菜さん(2023年4月27日、弁護士ドットコムニュース) 港区議に当選した新藤加菜さん(2023年4月27日、弁護士ドットコムニュース)

結果は1686票を得て当選した。

「政策論争をやって、議会で暴れたいです。SNSでの誹謗中傷、殺害予告を受けてきた私の経験を、ネットリテラシー教育など区政にもいかしていきたいと思っています」

他にも、ライフワークである動物愛護やペット同行避難の推進などにも取り組んでいきたいという。

今回の統一地方選では、新藤さんに限らず、インフルエンサーやYouTuberなどの候補者も多く出馬した。

「全国で色々な人が出馬して、それについての是非論はあります。でも、多様な候補者が出ることで、その人を当選させたくないという理由で選挙に行く人も出てくるかもしれない。色々な候補がでることで結果的に投票率が上がることは、民意の反映にもつながるし、私は肯定的に捉えています」

●「住民票もお墓もネットに置きたい」

ライブ配信をはじめ、SNSを駆使してきた新藤さんにとって、選挙期間中もネットを活用するのは自然な流れだった。検索で自分の名前がすぐ出てくるよう、動画を撮り溜めたり、ブログの更新を日に何度もしたりと、これまでの経験を生かした選挙戦。だからこそ、誹謗中傷を受けても「ネットは大好きです。住民票もお墓もネットに置きたいです」という。

「寝る前にツイッターでエゴサーチしたり、投稿したりするのが、唯一の楽しみなんです。誹謗中傷ももちろん多いんですが、よほどの内容をのぞいて、『話題にしてくれてありがとう』の意味で、いいねしていますよ」

港区議に当選した新藤加菜さん(2023年4月27日、弁護士ドットコムニュース) 港区議に当選した新藤加菜さん(2023年4月27日、弁護士ドットコムニュース)

ちなみに新藤さんが現在気になっているのが、他の議員たちのSNS活用方法だ。

「候補者で残念ながら落選した人も、当選した人も、選挙後も発信し続けないとダメです! それが有権者に対する誠意だと思います。やるならやり続けて欲しいですね」

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