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文房具振り回す「危ないお友達」からのケガ 「謝罪じゃ気が済まない」親ができること
画像はイメージです(Rina / PIXTA)

文房具振り回す「危ないお友達」からのケガ 「謝罪じゃ気が済まない」親ができること

子どもが小学校に通っていると、友達とケンカして帰ってくることがあります。「ケガだけはするな、させるな」というのが親心でしょうが、そうはいかないこともあります。

弁護士ドットコムにも、「同級生とのケンカで、小学生の息子がケガをした」という保護者からの相談がありました。

相談者によると、ケンカ相手が持っていた文房具が刺さり、着ていた衣服に穴が開き、軽傷を負ったようです。2年前にも今回のケンカ相手が違う生徒にはさみを振り回した際、止めに入った息子の顔に傷を残したことがあるという経緯もあり、電話で最初に謝っただけという相手の親の態度に怒っています。

「ケンカ両成敗」という言葉もありますが、このような場合、親から親に損害賠償を請求することはできるのでしょうか。小澤亜季子弁護士に聞きました。

●基本的には相手の親に請求することになる

ーーケガをした子の親が損害賠償を請求できますか

「当然ですが、ケガをした被害児本人は請求することができます。その上で、被害児の親は、被害児の法定代理人として、請求することになります。

また、被害児が亡くなった場合には、被害児の親自身が請求を行うことができます。さらに、被害児に重度の意識障害が残ってしまった場合や、顔面に除去できない傷跡が残ってしまった場合等にも、親自身として、慰謝料請求を行うことができます」

ーー誰に対して請求するのでしょうか。やはり相手の親でしょうか

「加害児は子どもですから、基本的に賠償金を支払うだけの資力がありません。そこで、加害児の親に損害賠償請求できるかどうかが問題になります。

加害児に責任能力(自己の行為の責任を弁識するに足りる知能)が認められない場合、加害児本人に請求することはできませんが、加害児の親に対しては、監督義務者として、請求をすることができます。

他方、加害児に責任能力が認められる場合は、加害児本人に請求することはできますが、加害児の親に対しては、親の監督義務違反と、子の加害行為によるケガとの間に因果関係がある場合に限って、損害賠償請求できるということになります。

加害児に責任能力が認められるかどうかはケースバイケースですが、小学生の場合、認められない場合が多いでしょう」

ーー請求の内容はどうなりますか

「ケガの治療費や、ケガによって壊れた物の修理代、慰謝料、もし後遺障害が残った場合には後遺障害による逸失利益等を請求することが考えられます」

●損害賠償請求するにあたり、証拠化などの備えは重要

ーー子どもがケガした際、親としてどのような備えをしておくべきでしょうか

「被害児と加害児の言い分が食い違っている場合には、ケンカの事実関係に関する証拠化が特に重要です。

診断書や治療費のレシート等を保管しておくのはもちろんのこと、被害児の言い分を詳細に聞き取り、書面化しておくとよいと思います。

また、ケンカを周囲で見ていた友人や先生等にヒアリングを行い、録音等できるとなお良いでしょう。これらのヒアリングは、記憶があいまいになる前に、なるべく早期に行うべきです。

さらに、学校側に対しても、早急に調査を行い、調査結果を示すよう要求しておきましょう」

●学校への損害賠償請求が認められる場合も考えられる

ーー学校側に対して、何か請求することはできるのでしょうか

「学校には、生徒を指導監督し、ケンカによるケガ等の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務があります。そして、個々のケースにおいて、学校が具体的な注意義務違反に違反しているといえる場合には、学校にも損害賠償請求をすることができます」

ーー具体的にはどのようなケースが挙げられますか

「たとえば、本件のように、以前も他の児童にケンカによってケガを負わせたことがある等、粗暴な児童、問題行動を繰り返す児童については、学校も格別の注意を払うべきです。

また、刃物等、他の児童を加害する恐れがある物については、その使用・保管についても、注意を払うべきといえます。

また、学校側に、発生原因の究明、保護者への十分な説明、再発防止などの取組を求めていくことも大切です」

ーー保護者や学校が手を取り合って、子どもがケガをする事態を防ぐ仕組みを構築することが重要になりそうですね

プロフィール

小澤 亜季子
小澤 亜季子(おざわ あきこ)弁護士 センチュリー法律事務所
事業再生・倒産を主力業務とする法律事務所に入所。実弟の突然死や自身の出産・育児などを経て、2018年退職代行サービスを開始。労使双方の立場から、労働トラブルを取り扱っている。育休プチMBA認定ファシリテーターとして、育休取得者の支援も行う。

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