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「人として扱って」 入管の警備員に首締められたブラジル男性、謝罪と賠償もとめ申し入れ
代理人が会見を開いた(2021年11月17日/東京・霞が関の司法記者クラブ/弁護士ドットコム)

「人として扱って」 入管の警備員に首締められたブラジル男性、謝罪と賠償もとめ申し入れ

東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で収容されている外国人男性が、警備を委託されている民間会社の警備員に「ヘッドロック」をかけられて、首にケガを負った問題で、男性の代理人が11月17日、都内で記者会見を開いて、同センター所長に示談を申し入れていることを明らかにした。

●「二度とこんなこと、起こってほしくない」

ケガを負ったのは、ブラジル国籍のフジナガ・レアル・ジャルデルさん(32)。フジナガさんは今年8月27日午後、同センターの運動場付近の階段に腰を下ろしていたところ、後ろから、警備員に腕で首を締められた。翌日、外部の病院で診察を受けたところ、全治2週間の頚椎捻挫(けいついねんざ)と診断された。

代理人によると、当時は、運動の時間で、フジナガさんが「ボールが外に出てしまった」と冗談を言ったという。それで怒った警備員にヘッドロックをかけられた。その後、警備員は「ふざけてやって、申し訳ない」と謝罪したが、反省の色が伝わらなかったため、フジナガさんは、警察署に被害届を出したという。

今回のケースは、警備員が民間会社から派遣されているが、フジナガさん側は、国家賠償法上の公権力の行使にあたる「公務員の職務行為」だとして、東日本入国管理センターが国家賠償法の賠償責任を負うと主張。10月26日付で、センター長あてに慰謝料100万円と謝罪などをもとめて示談を申し入れた。

しかし、それから2週間が経っても返答がなかったため、フジナガさんの代理人が11月15日、同センターに電話したところ、担当職員が「回答することはない」と話したという。代理人らは今後、現在も収容中のフジナガさん本人と相談しながら、刑事告訴や民事訴訟も検討していくとしている。

フジナガさんは代理人を通じて、「人として扱ってほしい、俺たちも人間」「希望をなくしたくない、人間として扱われないことが、どれだけつらいか(わかってほしい)」「二度とこんなこと、起こってほしくない」とコメントしている。

●「同じことが繰り返されてきた」

入管の収容をめぐっては、今年3月、スリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が名古屋入管の施設で亡くなる事件が起こり、法務省は8月10日、「職員の意識改革」などをうたった最終報告書をまとめた。しかし、不十分な報告書であったと批判されているばかりか、今回のケースはその後に発生している。

フジナガさんの代理人をつとめる加藤桂子弁護士は、この日の会見で次のように話した。

「入管の中では、加害行為、不法行為がおこなわれても、結局は、その情報はどこにも出てこない。今回の場合は、加害者が『ふざけてやって申し訳ない』と一言言ってそれ以上何もない。そういうことが起きた以上、入管・センターとして、こういうことが起こらないためにどうするか。国・入管として、どういう責任をとるのか(説明すべきだ)。

そういうことがまったく何もないまま、あたかも何事もなかったごとく繰り返されてきた。その結果、お亡くなりになる人もいる。誰も責任をとらない。そういう状況が続いていたんだと思う。(こういう情報が)表に出て、ちゃんと責任をとる人が責任をとるかたちに変えていく必要がある」

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