車体がコンパクトで燃費のいい軽自動車。ガソリン価格の高止まりが続く中、「庶民の足」として、その存在感を増している。全国軽自動車協会連合会が6月中旬に発表した、全国の自動車保有台数に対する軽自動車のシェア(2014年3月末時点)は、前年比0.7%増の37.9%で、過去最高を記録した。
軽自動車のメリットとして、燃費がいいことに加え、税金が安いことがあげられるだろう。たとえば、普通車にかかる自動車税は1000cc以下の排気量でも「2万9500円」であるのに対して、軽自動車税(排気量660cc以下)の場合は「7200円」と、大きな開きがある。
ただ、近年は軽自動車の性能も向上し、普通車と大きな差がなくなっている。そのような背景もあり、軽自動車税の優遇が見直されて、2015年度から「1万800円」に引き上げられることになっている。
見直しが行われた軽自動車の優遇税制だが、そもそも優遇されているのは、どういう理由なのだろうか。今後も、優遇を続ける必要があるのだろうか。小木曽良税理士に聞いた。
●戦後、軽自動車は「生活必需品」とみなされた
「軽自動車税は自動車税とは別物として扱われおり、原付(原動機付自転車)やバイク、オート三輪の税金と同じ枠組みとなっています。このため、自動車税と比較すると、税金が安く設定されています」
このように小木曽税理士は切り出した。
「軽自動車の優遇措置は、戦後、通産省(当時)が自動車を普及させ、車社会化を目指したことがきっかけとなり、1958年に創設されました。
当時の軽自動車は、性能が低く、排気量も小さかった(当時は360cc以下と規定)。ぜいたく品とみられていた普通自動車に対して、軽自動車は『生活必需品』とみなされたのです」
いまは、それほど明確な線引きがあるようには思えないが、その基準は今でも妥当なのだろうか。
「たしかに、軽自動車のサイズや性能、安全性は、普通車と比べても遜色ないレベルに向上しました。
軽自動車税は2015年度から1万800円に引き上げられますが、それでも自動車税と軽自動車税には格差があり、今後も軽自動車税の見直し論議は高まっていくと考えられます。
燃費の悪い軽自動車も実際に存在することから、燃費や環境性能に応じて税率を変えるのも一つの手なのかもしれません」
小木曽税理士はこのように述べつつも、「ただし、軽自動車が地方住民や低所得者にとって貴重な移動手段となっているのも事実です。そういった方々のためにも、一部の軽自動車に関しては、今後も、多少の優遇があってしかるべきなのかもしれません」と指摘していた。
過去最大のシェアを記録したこのタイミングは、軽自動車の役割についてあらためて考えるのに、良い時期なのかもしれない。
【取材協力税理士】
小木曽良(おぎそ・りょう)税理士
大学卒業後、大手税理士法人で勤務をしたのち、平成23年に独立、開業。会社の立ち上げから資金調達などの新設法人の顧問業務や、事業承継や相続対策業務を得意とする。
事務所名 :フロンティア会計事務所
事務所URL:http://www.frontier-ac.com/