「裁判は時間がかかる」「お金がいくらかかるかわからない」——。そんな不満にこたえ、「市民にとって本当に身近で利用しやすい司法」のあり方を考えるシンポジウムが9月20日、東京・霞が関の弁護士会館で開かれた。弁護士をはじめとする司法関係者ら約800人が集まり、議論に耳を傾けた。
主催の日弁連・村越進会長は、冒頭のあいさつで、民事訴訟の件数が減ってきていると指摘。これは、ほんとうなら裁判で公正に解決されるべき問題が、裁判の場に持ち込まれていないからだとして、「司法に関わる全員が大いに反省し、改革していかなければならない」と訴えた。
シンポジウムは3部構成。第1部は「民事裁判」をめぐる現状分析をふまえたうえで、時間・費用の削減、審理の充実など、より利用しやすい裁判を実現するための策を話し合った。
第2部は「家庭裁判所」をめぐる討論。オーストラリア視察や、当事者からの聞き取り報告なども踏まえて、急増する家事事件への対応法や、真に子どものためになる調停や面会交流の実現を話し合った。
そして第3部では、泉徳治・元最高裁判事や片山善博・前鳥取県知事らが、そうした民事司法改革をどう実現していくのか、その道筋を語った。
第1部のパネルディスカッションに登壇した三屋裕子さん(元日本バレーボール協会理事)は「弁護士や裁判はなるべく身近にしたくない存在」と打ち明け、弁護士たちの苦笑を誘った。
しかし、今回のシンポジウムを通じて「弁護士は怖くない」と感じたという。「弁護士と接する機会が少ない普通の人は、弁護士のことを怖いと思っている。もっと、みんなに知ってもらう必要がある」と話していた。