米アマゾンが二次創作の公認市場「Kindle Worlds」を始めると発表した。人気のあるテレビ番組や映画、小説の登場人物やストーリーをもとに作られた二次創作の作品を、電子書籍「Kindle」のコンテンツとして公認販売できるシステムだ。
アマゾンが原著作者と交渉し、ライセンスを獲った作品について、そのファンたちが二次創作の作品を出版する。その売上から原著作者と二次創作者の双方に印税が支払われるという。第1弾として、米国で人気のテレビドラマ「ゴシップガール」などの二次創作が可能になったと、アマゾンは5月下旬に発表している。
コミックマーケットに代表されるように、日本では二次創作活動が盛んにおこなわれている。しかし、「Kindle Worlds」のように原著作者公認というものは少ないように見受けられる。公認されていない二次創作によって利益を得ることは、何か問題にはならないのだろうか。また、「Kindle Worlds」のような出版システムが日本にも導入されたらどうなるのだろうか。著作権に詳しい石下雅樹弁護士に聞いた。
●著作者が許諾していない二次創作は「著作権侵害」の可能性がある
「著作者が許諾していない二次創作は、私的利用等の例外をのぞき、多くの場合、著作権(特に翻案権等)や著作者人格権(同一性保持権等)の侵害となりえます」
このように石下弁護士は、二次創作が違法となる可能性を指摘する。
「この場合、原著作者等から、訴訟等によって差止請求や損害賠償請求を受け、二次創作の使用の中止や成果物の廃棄を余儀なくされたり、二次創作によって得た利益分の賠償や慰謝料の支払を余儀なくされる可能性があります。
さらに、故意に著作権侵害をおこなった場合は、最大10年以下の懲役と1000万円以下の罰金が科される可能性もないとはいえません」
つまり、著作者に無断で二次創作をおこなうことは、民事責任や刑事責任をおうリスクをはらんでいるということなのだ。
●「Kindle Worlds」のようなシステムは日本でも普及するか?
では、もし「Kindle Worlds」のようなシステムが日本にも導入されたら、どうだろう?
「このようなシステムが適法に導入されたとしたら、利益の一部が原作者に還流され、原作者の保護につながる面もあります」
このように、原作者にとってプラスの面がありうることを指摘しつつ、石下弁護士は次のように述べる。
「もっとも、二次創作として適切か否かの『決定権』をアマゾンが持つという方式が、原作者にとって、『自己が望まない二次創作』の公表まで受忍すべきことを意味するとすれば、受け入れ難いと感じる原作者も少なくないでしょう。そうすると、これが普及の妨げとなる可能性があります。
また、決定権をアマゾンが持つためには、原作者が同一性保持権の行使を包括的に控えるという合意を、原作者とアマゾンとの契約に含める必要があると思われますが、そのような合意が後日無効となり、結果として、原作者とアマゾンとの間の紛争の種となる可能性も想定されます」
米国でスタートしたからといっても、すぐに日本でも同じシステムが広がるというわけではないのかもしれない。まずは、米国で始まった二次創作の公認市場がどのように発展していくのか、その推移を見守るのが得策といえそうだ。