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自殺が起きた部屋の賃貸、25%が「条件次第で検討」 事故物件調査(2)
調査結果より

自殺が起きた部屋の賃貸、25%が「条件次第で検討」 事故物件調査(2)

部屋探し中に偶然出会った事故物件。物件の条件次第では借りることを検討しますか? 今回は、事故の内容や起きた時期によって検討状況は変わるのか聞いてみました。検討する、しないと回答した人の理由も合わせて紹介します。

(この記事はSUUMOジャーナル編集部との共同企画です。初回記事「怖いイメージのある事故物件。住んだことがある人の3割はあえて選択!? 事故物件調査(1)」はこちら。https://c-1012.bengo4.com/n_7470/

●自然死、病死の場合には、条件が合えば検討する人が約半数も

今回の調査では、事故物件に住んだことがある人は5.5%と少数派でした。ただ、部屋探しをしている中で、見つけた物件が「事故物件」であることを偶然知ることがあるかもしれません。そんなとき、物件の条件(家賃や広さなど)によって検討するでしょうか。他のみんながどうしているのか気になるところですよね。

結果は、該当の部屋であっても自然死や病死であれば住むことを検討すると答えた人が約半数。さすがに該当の部屋で自殺や他殺があった場合には3割に届きませんでしたが、少数ながら検討する人はいて、需要はあるようです。また、自殺や他殺であっても、該当の部屋ではなく同じ建物内で起こった場合であれば、検討するという人が4割いることもわかりました。そして事故物件の内容に関わらず、女性より男性のほうが検討する割合は高いようです。

●自殺や他殺は、何年経っていても時期に関わらず契約しないという人が7割以上

では事故が起きた時期によっては検討する、しないは変わるのでしょうか。

該当の部屋で自殺、他殺があった場合には、それぞれ71.5%、73.0%が「時期にかかわらず、検討しない」と回答。特に女性は8割以上が「検討しない」と答えました。

一方、該当の部屋で病死、自然死があった場合はそれぞれ28.0%、28.8%が「2年未満でも、検討する」と回答しており、事故の原因によって検討する、しないは多少変わってくるようです。

ちなみに事故物件に関しては、「事故から○年経過までは告知義務あり」といった告知時期に関する明確なルールが存在しません。借りるという選択をするとしても、事故があったかどうかの事実は知りたいもの。ルールが存在しないとすれば、自ら確認をするのが入居後に後悔しないために賢明と言えそうです。

●「相場より家賃が安い」「交通利便性が良い」場合、事故物件でも検討する人が多数

次に、先の質問で「物件の条件次第で検討する」と回答した人に、どんな条件なら事故物件の契約を検討するのか聞いてみました。

ダントツで多かったのは、「相場より家賃が安い」で9割以上が支持。男女別で見ても、男女ともに9割以上が検討すると答えています。次に「交通の利便性が良い」(65.5%)、「リフォーム済みできれい」(57.9%)、「部屋の間取り・広さがちょうどよい」(56.6%)、「部屋の設備がよい」(55.7%)と続きます。家賃はもちろん、同じエリア・相場の物件と比較して、条件が少しでもよければ事故物件でも候補として検討する人が多いようです。

また、「相場より家賃が安い」を選んだ人に、例えば8万円の物件で、どのくらい安ければ事故物件でも契約するか聞いたところ、「相場より30%安い、5.6万円以下なら」と答えた人が3割を超え、「それ以上安い場合なら」は22.9%いました。8万円の家賃なら1年で96万円の負担ですが、30%安い場合には67.2万円で済みます。一人暮らしなどでは、家賃を出来るだけおさえたいのに加え、ずっとそこに暮らすわけではないため、わずかの期間なら安い家賃で住みたいと思う人が多いのかもしれません。

最後に、「物件の条件にかかわらず、検討しない」と答えた人に、その理由を具体的に聞いてみました。

多かったのは「なんとなく怖い」「なんとなく嫌」というもの。決定的な理由があるわけではないけれど、心理的に受け付けない、嫌悪感がある人が多そう。他にも、「ポジティブな気分になれない」「その情報が頭から離れずくつろげない」「心霊現象がおきそうだから」などの心理的なものが多数。また、「イメージが良くなく、周りに自殺したことを知っている人がいると、色々言われそう」といった周りの目を気にするコメントも見られました。

今回の調査では、「事故物件」の心理的瑕疵の内容や時期によって、検討状況は変化するのかどうかのアンケートを取りましたが、法的に事故物件の告知義務は決められているのでしょうか? 瀬戸仲男(せと・なかお)弁護士に聞きました。

「宅地建物取引業法(宅建業法)の規定によって、宅地建物取引業者(宅建業者)は、物件についての説明義務を課されています。これを『重要事項説明義務』と言います。買主・借主は、物件において人が異常死したという事実について大いに気になるものです。このような人の気持ちに影響を与えるマイナスの要素を『心理的瑕疵』と言います。この心理的瑕疵についても、重要事項説明書で説明すべきであるとされています」

「仮に、宅建業者がこの説明義務に違反して、事故物件であることを説明せずに業務を行った場合、宅建業法違反となり、免許停止や、悪質であれば宅建業法上の罰則を科されることにもなりかねません。また、説明義務違反が重大である場合、例えば、事故の内容(自殺なのか、他殺なのか。他殺の場合、被害者の人数や、殺害方法が残忍なものかなど)、物件の規模、用途、金額などによっては、単に宅建業法違反という行政法規違反に問われるだけでなく、刑事法規(刑法上の詐欺罪<不作為による欺もう行為>など)にも問われる可能性がありそうです」(瀬戸弁護士)

また調査結果からは、事故物件に住むことを検討する理由として、「家賃が安い」ことを挙げる人が多いことが分かりました。実際に事故物件を借りたいといった場合に、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

「事故物件の「事故」の内容を書面に書いてもらっておきましょう。例えば、本当は「他殺事件」であるにもかかわらず、「自然死」などと説明されて入居した後に、近所の人などから真相を聞かされて、損害賠償請求などを行う場合、説明の食い違い(虚偽の説明)を立証するのは困難ですが、書面化しておけば、安心ですね。重要事項説明書の「特記事項」の欄に具体的な事故の内容を書いておくようにお願いしてみましょう」(瀬戸弁護士)

●まとめ

今回の調査で、事故物件の中でも自然死や病死などであれば借りることを検討する人は多く、事故物件に対する捉え方はさまざまだということが分かりました。とはいえ自殺、他殺などは、たとえ条件が良くても契約はしない人が7割以上ですから、検討するかしないかは、事故の内容にもよるようです。

事故物件に住む場合、その部屋自体もそうですが、周辺の環境などにも気を付けたいもの。特に原因が他殺だった場合などは周辺の治安が心配です。立地的に安全かどうか、侵入しやすい建物の構造ではないかなど、事前にきちんと確認をするようにしましょうね。

<調査概要>

・[事故物件に関する調査]より

・調査期間 2017年12月21日~25日

・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)

・対象:全国の賃貸集合住宅にお住まいで、半年以内に賃貸で部屋探しをする予定のある方

・有効回答数:400名

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

瀬戸 仲男
瀬戸 仲男(せと なかお)弁護士 アルティ法律事務所
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築・相続その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の歴史・伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。

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