人気YouTuber、はじめしゃちょーが自身のYouTubeチャンネルで、8年間借りていた賃貸物件の退去費用が362万5012円になったと報告し、話題を呼んでいる。
現在は豪邸に住んでいるはじめしゃちょーだが、大学3年のころから住んでいた思い入れのある家賃15万円の3階建て賃貸を手放せず、借り続けてきたという。
内部は壁に穴が開くなど室内の傷みが進行していた。業者が算出した退去費用を聞いたはじめしゃちょーは「開いた口が塞がらない」とあぜんとした表情。物件の大家さんですら「300⁉️」と驚く始末だった。
動画は笑顔の大団円で終わったが、一般的に、賃貸物件でこれほどの高額な退去費(修繕費)を示された場合、払わなければいけないのだろうか。寺田弘晃弁護士に聞いた。
●「原状回復」の義務とは?
——今回は300万円超の退去費でしたが、高すぎて金額に納得できない場合、借りている側はどのように対応すればよいのでしょうか
まず、賃借人(借主)は原則として物件の「原状回復」費用を負担する義務があります。
勘違いされるかたもいますが、「原状回復」とは借りた当時の状態にするという意味ではななく、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧することを意味しています。
ですので、「通常損耗」や「経年劣化」などによる汚損といったものは、賃借人が負担しなくてもいいのです。
一般論での説明となりますが、高すぎて納得できない金額の退去費を示された場合、次のように対応するとよいかと思います。
(1)契約書の確認
まずは契約書を確認しましょう。退去費の妥当性を判断するためには、契約内容を確認する必要があります。
賃借人(借主)が修繕義務を負担しなくてもよい場合があります。たとえば契約書に「賃貸人(貸主側)が修繕義務を負担する」といった規定があるようなケースです。
(2)明細・内訳を開示してもらう
先の「通常損耗」については原状回復義務から除外されます。請求されている退去費の中に賃借人の原状回復義務を超えるものが含まれていないか確認してください。
(3)妥当と思われる金額まで交渉
高額過ぎて過剰な請求と思われる場合、妥当な範囲まで交渉します。
たとえば、長年借りている物件の場合、減価償却が考慮されるべきであり、賃借人が費用をほとんど負担しなくてもいいケースもあります。
国交省が公開している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にできます。弁護士などにも相談するとよいでしょう。
(4)敷金の充当
賃貸借契約の締結において、敷金を差し入れていることがあります。敷金とは、賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で交付する金銭をいい、物件明け渡しの際に、それまでに生じた債務に充当されます。
そこで、妥当な退去費についても敷金を充当し、その差額を支払うようにすれば新たな支出が減るので負担が軽くなると思います。