熊谷組が施工し、住友不動産が2003年に販売した横浜市西区のマンション1棟で、建物を支える杭が固い地盤に到達していないという、大きなミスが見つかった。両社は6月上旬に、「ご迷惑、ご心配をおかけしております」として謝罪した。
報道によると、65戸が入るこのマンションでは、建物を支える杭の長さが不足。硬い地盤に達しておらず、建物が傾いていた。横浜市は、施工ミスが建築基準法違反にあたるとして、熊谷組と住友不動産に是正指導を行っている。
住友不動産は、マンションを補修し、住民に仮住まいを提供することを発表。場合によっては、建て替え工事も検討するとしている。希望があれば、買い取り補償も行うという。施工した熊谷組も「責任をもって対応する」としている。
もし、自分が住んでいるマンションで今回のような施工ミスが見つかった場合、住人は販売業者に対して、「お金を返せ」と言えないのだろうか。不動産問題にくわしい瀬戸仲男弁護士に聞いた。
●「欠陥物を売った人」の責任
「報道では、マンションの基礎部分の杭が、地中の支持層(固い層)に達していなかった点が指摘されています。もしこうした事実があれば、新築物件を購入した所有者は、販売業者に対して損害賠償を請求したり、売買契約を解除してマンションの購入代金を請求することができる可能性があります」
どういう理由で、請求ができるのだろうか?
「まずは、マンションを売った人の『瑕疵(かし)担保責任』です。瑕疵とは欠陥のことで、欠陥品を売った人の責任ということですね」
マンションの販売開始は10年以上前だが、そうした責任はいつまで問えるのだろうか?
「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)95条は、住宅の構造上主要な部分の『隠れた瑕疵』について、売り主が引き渡しから10年間責任を負うこととされています。
本件マンションは2003年に販売されたマンションですが、引渡の日から何年経過しているのかが不明です。実際に引き渡された日から10年以内ならば、品確法が適用される可能性もあります。専門家に相談して対処するのがよいでしょう。
なお、瑕疵担保責任が問えるのは、欠陥が発覚してから1年以内です」
●マンションの建て替えは所有者全体の問題
今後、事態はどのように推移していくだろうか。
「一般的な対応としては、瑕疵を『補修』することになるでしょう。しかし、本件マンションの場合は地中深くの杭に瑕疵があるようですから、おそらく補修は容易ではないと思われます。補修ができなければ、抜本的な是正、つまり『建て替え』を行うということになりますね。
もっとも、建て替えを行うかどうかは所有者全体の問題ですので、管理組合が中心となって、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)62条~64条に基づいて行うことになります。その場合、建て替えの費用を誰が負担するのかが大問題です。
住民側としては、売主側などに負担させたいと考えるでしょうが、売主側の抵抗も予想されますので、十分に協議し、交渉することが肝要かと思われます」
瀬戸弁護士はこのように話していた。