「歩道を走る自転車を私人逮捕する活動のススメ」。そんなタイトルの記事がこのほど、「はてな匿名ダイアリー」に投稿されて、話題になった。この記事は、私人(民間人)逮捕の手順を解説しているものだが、はたして、正しい「私人逮捕」なのだろうか。
●投稿主「運転手は罰を受けずに逃げている」
話題になった記事は、自転車の歩道走行について、一部例外をのぞいて禁止であり、「この違反には『3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金』が科せられるが、運転者は罰を受けずに逃げている」と指摘する。
そのうえで、一般人でも「私人逮捕」することができるとして、次のような手順を示している。
(1)歩道を走る自転車(運転手)を注意して停車させる
(2)違法であることを伝え、氏名や住所が記載された本人証明書(免許証など)を見せるように要求する
→ 応じた場合は、氏名と住所をメモして、後ほど警察に提出する。運転者は解放する
→ 拒否した場合は、逃亡のおそれがあるので、その場で私人逮捕する
(3)警察に連絡して引き渡す
●「私人逮捕」は例外的に許されている
投稿主の自宅付近では、歩道を走る自転車が多く、すれ違いざまにぶつかることもあり、毎日危険を感じていることから、このような「私人逮捕」の活動をおこなっているということだ。
はたして、「私人逮捕」のやり方として正しいのだろうか。岩澤祐未弁護士は次のように解説する。
「私人逮捕とは、法律上の『現行犯逮捕』のことをいいます(刑事訴訟法213条)。まず、犯罪がおこなわれたことが『明白』である必要があります。そして、現行犯であることが『明白』な場合、私人、つまり民間人であっても逮捕することが許されます。
その際の実力行使については、現行犯人から抵抗を受けたときの状況から見て、社会通念上『必要かつ相当』と認められる限度内で、例外的に許されます」(岩澤弁護士)
●現行犯であることが「明白」でなければならない
「普通、自転車は、その走行の安全を確保するため『やむを得ない』と認められるときは、歩道を走ることが許されています。
『やむを得ない」とは、道路の交通量が著しく多い・車道が狭い・路上駐車車両が多い、などです。さまざまな客観状況にもとづいて判断されます。
この『やむを得ない』可能性が少しでもあれば、現行犯であることが『明白』とはいえません。私人逮捕は許されないと考えます」
●「実力行使」の程度は事案の軽重に相応であること
「また、現行犯に対する実力行使の程度は、事案の軽重などに相応でなければなりません。
そのため、たとえば、事故が起きていない状況などで、自転車運転手の身体を直接拘束するのは『必要かつ相当』とまでいえない可能性があります。この場合も、私人逮捕は許されないでしょう。
犯罪が『明白』といえない私人逮捕や、『必要かつ相当』な範囲を逸脱した実力行使による私人逮捕は、むしろ、暴行罪や逮捕・監禁罪の違法行為ともなりかねません。
そのため、まずは身の危険を感じたら避ける、注意するなど、防御行動にとどめるのが良いでしょう」
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