「日本が前進していることの表れ」杉田議員「LGBT生産性がない」炎上について考察
「新潮45」8月号

「日本が前進していることの表れ」杉田議員「LGBT生産性がない」炎上について考察

自民党の杉田水脈衆院議員が、月刊誌『新潮45』への寄稿文で、セクシャル・マイノリティの人たちについて「生産性がない」などという考えを示したことが批判をあつめている。自民党は8月1日、公式サイト上で「個人的な意見とはいえ、問題への理解不足と関係者への配慮を書いた表現があることも事実である」として、杉田議員本人に対して、十分に注意するよう指導したと発表した。

●杉田議員「LGBTのカップルは子どもを作らない、つまり生産性がないのです」

問題になった寄稿文をふりかえる。杉田議員は、月刊誌『新潮45』(8月号)で次のようにつづった。

「LGBTだからといって、実際そんなに差別されているものでしょうか」

「例えば、子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。しかし、LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」

「なぜ男と女、二つの性だけではいけないのでしょう」

このような内容を受けて、インターネット上では、「セクシャル・マイノリティ(LGBTなど)に対する差別だ」といった批判の声があがった。東京・永田町の自民党本部前では、杉田議員の辞職をもとめる抗議行動が起きた。障害者や難病患者の支援団体も組織を立ち上げて、抗議の意思を示していくとしている。

あらためて、「LGBTは生産性がない」という言葉をどう考えるべきなのか。セクシュアル・マイノリティの問題にくわしい原島有史弁護士に聞いた。

●「党執行部の認識があらためて問われることになる」

「杉田議員が『新潮45』(8月号)に寄稿して以降、これまでに多くの識者や団体、メディアなどが批判のコメントを発表しています。このような中、自民党は8月1日、公式ホームページにおいて、『個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある』とのコメントを発表しました。

しかし、杉田議員本人からは謝罪や撤回などの真摯な対応は見られず、ネット上では今も杉田議員だけでなく、自民党の姿勢についても疑問視する意見が相次いでいます。

実際、寄稿文が批判された当初(7月22日)、杉田議員はツイッターで<『間違ったこと言ってないんだから、胸張っていればいいよ』とか『杉田さんはそのままでいいからね』とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださる><自民党の懐の深さを感じます>と投稿していました。

さらに、自民党の二階俊博幹事長は7月24日、『人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある』と述べ、問題視しない考えを示していました。

このような流れに対し、自民党の石破茂元幹事長は7月28日、兵庫県で開いた講演会で、杉田議員の寄稿を批判するコメントを出しました。また、8月3日には、野田聖子総務相が寄稿文を批判したうえで、LGBT対策が自民党総裁選のテーマの1つになるとの考えを示しました。

今回の騒動は、すでに杉田議員一個人の問題から、自民党という政権与党の政治姿勢そのものにまで波及するトピックとなっています。

自民党は2016年5月24日付で『性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方』を公表していますが、その理念が本当に党内で共有されているのか、特に『大臣クラス』をはじめとした党執行部の認識があらためて問われることになると思います」

●「杉田議員の発言は明確に誤りである」

「先ほどの二階幹事長の発言にもありましたが、個人の政治的立場や人生観というのは、さまざまな意見がありますので、『これが正解』という唯一の答えがあるわけではありません。ただ、たとえ『正しい答え』がないような議論であったとしても、その主張が『誤り』であるかどうかを判断する足掛かりはあります。

つまり、ある主張について、それがまったく事実の基礎を欠くか、または社会観念上著しく妥当性を欠くようなときは、その主張が『明確な間違いである』と判断することは可能です(高専学校校長の裁量権の範囲について判示した最高裁判決平成8年3月8日/民集50巻3号469頁参照)。

杉田議員の寄稿文を見ると、初っ端から『LGBTだからといって、実際そんなに差別されているものでしょうか』という感想からはじまっていますが、我が国におけるLGBT当事者への差別や偏見は、これまでにも多くの研究・調査で明らかにされています。

また、自民党が公表している『性的指向・性同一性(性自認)の多様性って?自民党の考え方』というパンフレットでは、LGBTは『本人の意思や趣味・嗜好の問題との誤解が広まっている』と問題提起されています。それにもかかわらず、杉田議員の寄稿文では『LGBは、性的嗜好の話です』と断言しています。

指摘しはじめるとキリがないのですが、このように杉田議員の寄稿文は全体にわたって、事実の基礎を欠いており、この時点で論証としては明確に誤りだと判断することができます」

●「国民を家畜のように取り扱う発言だ」

「このように、誤りだらけの寄稿文ですが、その中でもとりわけ強烈だったのが、LGBT当事者を指して、『彼ら彼女らは子供を作らない、つまり生産性がないのです』と言い放った部分でしょう。

まるで畜産業のように、政治を捉えているのでしょうか。『国民はつがいになって繁殖してこそ価値がある、そうでない国民は生産性がない生き物だ』というのですから、国政をあずかる政治家が言っていい内容ではありません。

杉田議員のこの主張には、LGBT当事者だけでなく、障がい者や難病患者の支援団体を含め、大勢の国民からも怒りの声が上がっています。当然でしょう。国民を家畜のように取り扱うこの発言が、社会観念上著しく妥当性を欠くことは明らかです」

●「他者の気持ちを想像できるマインドを大切にしていく」

「今回、杉田議員の発言に対して、多くの国民が実際に声を上げました。これは、多様性を尊重する社会に向けて、日本が前進していることの表れといえるかもしれません。

ただし、LGBT問題に対する施策が前進しているかというと、かならずしも楽観視できる状況下にはありません。マイノリティ当事者が、今なお差別や偏見にさらされている現状が、研究や調査によって明らかにされているにもかかわらず、国レベルでの法制度はいまだ何もありません。

多様性を尊重する社会の実現は、マイノリティ当事者だけでなく、すべての市民にとって大切な課題です。より良い社会を実現するために、私たち一人一人が、日ごろから他者の気持ちを想像できるマインドを大切にしていく必要があるのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)

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