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再審請求中の死刑執行「誤った判決なら取り返しがつかない」弁護士が「暴挙」と批判
法務省

再審請求中の死刑執行「誤った判決なら取り返しがつかない」弁護士が「暴挙」と批判

法務省は7月13日、2人の死刑を執行した。このうち、1990年代に女性4人を殺害し、再審請求中だった西川正勝死刑囚(61)が含まれたことが注目された。

西川死刑囚は、1991年にスナックの女性経営者4人を殺害して、大阪府でも女性落語家を強盗目的で襲った。一、二審ともに死刑判決で、最高裁で上告が棄却された。朝日新聞の報道によると、これまでに複数回再審請求をして棄却され、今年5月にも改めて請求していたという。

再審請求中に死刑を執行することをどう考えればいいのか。萩原猛弁護士に聞いた。

●世界の3分の2以上の国が死刑を廃止している

日本の死刑制度の現状はどうなっているのか。

「日本には、約130名の死刑確定者がおり、毎年、死刑判決が言い渡され、その執行が繰り返されています。国際的には、10年以上死刑を執行していない事実上の死刑廃止国も含めれば、死刑廃止国は140か国に登り、世界の3分の2以上の国が死刑制度を廃止しています。

また、先進国グループであるOECD加盟国34か国中、死刑があるのは日本、アメリカの一部の州及び韓国だけですが、韓国は死刑の執行を20年近く停止しています。

つまり、OECD加盟国中、死刑制度を存置し、国家として統一して執行しているのは日本だけです。このように国際社会の趨勢は死刑制度と決別している中で、日本は国連の自由権規約委員会や拷問禁止委員会等の国際機関から、死刑執行の停止と死刑廃止に向けての検討をなすよう勧告を受け続けているのです。日弁連は、昨年10月、2020年までに死刑制度の廃止を目指す宣言を採択しました。

このような状況にありながら、またしても、死刑が執行されました。しかも、執行された1名は再審請求中だったというのです」

●死刑確定後、再審無罪となった例が4件も

再審請求中の死刑執行をどう考えればいいのか。

「再審制度は、無辜の救済の理念のもと、三審制の司法制度が救済できなかった冤罪被害者を救う最後のセイフティネットです。この再審制度によって、確定した死刑判決から、再審無罪となって救済された事例が、我が国には4件も存在します。

更に、冤罪被害は、無実の者が有罪とされることだけではありません。近時、裁判員裁判での死刑判決が上訴審で覆った事例が複数生じています。本来無期懲役刑を受けるべきだった人が、誤って死刑判決を受けてしまったということです。これは、いわば『量刑判断における冤罪』です。

司法制度は人間が作った制度です。そして、人間が作った制度に完璧なものはありません。冤罪をゼロにすることは不可能なのです。誤った死刑判決が執行されてしまえば、取り返しの付かない事態となります。

死刑判決からの最後の救済を現に求めている人を、不透明な法務大臣の裁量で奈落の底へ突き落すような今回の死刑執行、これは『暴挙』というしかありません」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

萩原 猛
萩原 猛(はぎわら たけし)弁護士 ロード法律事務所
埼玉県・東京都を中心に、刑事弁護を中心に弁護活動を行う。いっぽうで、交通事故・医療過誤等の人身傷害損害賠償請求事件をはじめ、男女関係・名誉毀損等に起因する慰謝料請求事件や、欠陥住宅訴訟など様々な損害賠償請求事件も扱う。

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