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拘置所で免許更新できず失効「刑が確定してないのに…絶望的」、当事者から改善求める声
集まった署名を手にするシスターの吉井環さん(左)や本村伸子・衆院議員(中央)ら(2月29日、東京都千代田区の参議院議員会館、弁護士ドットコムニュース撮影)

拘置所で免許更新できず失効「刑が確定してないのに…絶望的」、当事者から改善求める声

名古屋拘置所に収容されている50代男性の支援者が2月29日、拘置所で運転免許証を更新できるようにしてほしいと求める署名を国会議員らに手渡した。集まった署名は衆議院と参議院の議長に届けられるという。(ニュース編集部・一宮俊介)

拘置所は刑事施設の一つで、主に起訴された人や裁判中の人が入っている。刑務所と違って、収容者の多くが刑が確定する前の人たち(未決拘禁者)だ。

この日署名を提出した「援助マリア修道会・西宮修道院」(兵庫県西宮市)のシスター、吉井環さん(64)によると、約2年前、修道院でさまざまな人の相談に応じている中で名古屋拘置所にいる男性から「運転免許証が更新できない」という連絡があったという。

運転免許は有効期間が過ぎて失効してから3年が経過するまでは簡単な試験で再取得できるが、3年以上を過ぎると技能試験などを最初から全て受け直さなければならなくなる。

名古屋拘置所の男性は、1審の裁判で有罪判決を受けたが、一貫して無罪を主張し控訴しており、拘置所に収容されてから3年が過ぎて免許が失効してしまったという。

吉井環さん 会見で拘置所での免許更新の必要性を話すシスターの吉井環さん(2月29日、東京都千代田区の参議院議員会館、弁護士ドットコムニュース撮影)

男性は元々、長距離トラック運転手の仕事をしていて、無事故、無違反を20年以上続けてきた。社会復帰してからもトラックの運転手に戻ることを希望しているが、一から自動車教習所に通うことは年齢や多額の費用が必要となることなどから諦めかけているという。

男性は吉井さんを通して、「私が再度、免許を持つことはかなり難しいと思います。正直、絶望的です。生きる希望が奪われてしまいました。今回私が味わった絶望と苦痛を他の人には味わってほしくありません。私と同様に免許を失ってしまった人の免許の回復等の救済をよろしくお願いします」とコメントを寄せた。

法務省の通知によると、懲役刑や禁固刑が確定した人は免許失効後の再取得の手続きが定められているが、刑が確定していない未決拘禁者はこの対象になっていないという。そこで吉井さんは今回、道路交通法を改正して未決拘禁者がいる拘置所でも免許を更新できるようにしてほしいと訴えている。

吉井さんは2023年6月から署名活動をオンラインと紙で始め、これまでに合計約2400人分が集まった。この日署名を受け取った共産党の本村伸子・衆院議員は「刑が確定した方々は免許の更新ができるのに、まだ刑が確定してない方はできないことは何の合理性もない。人権の問題だと重く受け止める」と話した。

吉井さんはこの日、参議院議員会館で開いた記者会見で、「拘置所にいても出所後に社会復帰する道にいちるの望みが持てますようにという願いで署名を提出した。拘置所という私たちの目から隠れたところで何が起こっているのかを知るきっかけになってほしい」と呼びかけた。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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