心霊スポットとして有名な廃墟ホテルで、肝試しに訪れた20代の男女4人に対して「不法侵入になる」などと迫り、金を脅し取ったとして、心霊系YouTuberの男女3人が恐喝などの疑いで逮捕された。
報道によると、3人は「不法侵入になる」「民事にするか刑事にするか選んで下さい」「示談なら、1人30万円払って下さい」として、被害者たちから合わせて120万円を脅し取った疑いが持たれている。
逮捕された3人のうち1人は容疑を認め、残り2人は否認しているという。一方で、他にも同じような"被害"を訴えている人もいるようだ。今回の事件について、刑事事件にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。
●廃墟ホテルに肝試しする法的問題
実は、今回の事件の被害者たちが、廃墟ホテルに肝試し目的で立ち入っていることから、違法な不法侵入となるのかが問題となります。
不法侵入は、建造物侵入罪(刑法130条)のことであり、ざっくり言うと、他人が管理する建造物に正当な理由なく管理権者の意思に反して立ち入ると成立します。
たとえ廃墟ホテルであっても、施錠されていたり、立ち入り禁止の表示があったりすれば、他人が管理する建造物といえ、無断に立ち入る行為は管理権者の意思に反します。また肝試し目的が正当な理由にならないことは言うまでもありません。
したがって、廃墟ホテルに肝試し目的で立ち入る行為は、建造物侵入罪となる可能性があります。
建造物侵入罪に該当しない場合であっても、「人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建造物又は船舶の内に正当な理由がなくひそんでいた」行為として、軽犯罪法1条1号違反に問われる可能性もあります。
●「警察に通報するぞ」と脅かす法的問題
また、仮に被害者らの行為が不法侵入になるとして、「警察に通報するぞ」と言って脅す行為は脅迫になるのかが問題となります。
脅迫罪は、相手またはその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知することにより成立します(刑法222条)。
相手の違法行為や不正行為に対して「法的措置を取るぞ」とか「告発するぞ」と告知する行為について、正当な権利行使といえる場合には、脅迫罪は成立しませんが、真実の追究ではなく、単に畏怖させることが目的であれば、脅迫罪は成立するとされています(大判大正3年12月1日判決)。
今回の事件の場合、心霊系YouTuberを含む逮捕された3人は、警察に通報する意思はなく、単に畏怖させて金を取るのが目的だったと思われますので、判例の基準に従えば、脅迫罪が成立します。
そのうえで、犯人らは脅迫してお金を脅し取っていることから、最終的に恐喝罪(刑法249条)が成立することになります。
以上より、肝試し目的で廃墟に立ち入る行為は、建造物侵入罪や軽犯罪法違反に問われる可能性があり、悪質なYouTuberに漬け込まれるリスクもあるので、気を付けたほうがよいでしょう。