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子どもトラブルで「復讐代行」、依頼した母親らが逮捕 そもそも違法ではないの?
画像はイメージです(dorry / PIXTA)

子どもトラブルで「復讐代行」、依頼した母親らが逮捕 そもそも違法ではないの?

「復讐」を仕事にすることは許されるのだろうか。

子ども同士の学校でのトラブルをめぐり、相手の親の車を傷つけたなどとして、沖縄県那覇市の母親(33)と千葉県成田市の男性(56)がこのほど、器物損壊の疑いで沖縄県警に逮捕された。

報道によると、この母親の子どもが学校の同級生とトラブルになり、母親は同級生の父親の職場に苦情を入れるなど、いやがらせをしていたようだ。その後、母親が「復讐代行業」を名乗る男性に仕事を依頼したとみられるという。

母親と依頼を受けた男性は共謀して、2021年1月、那覇市の民家に駐車していた同級生の父親が所有する車2台に剥離剤をかけて塗装をはがすなどした疑いがある。母親は被害者へのつきまとい行為で、沖縄県の迷惑行為防止条例違反の疑いでも逮捕されていたという。

復讐を代わりに実行する存在がいるというのは驚きだ。復讐として他人に危害を及ぼすような行為が許されないのは言うまでもないが、「復讐代行業」自体は違法ではないのだろうか。本間久雄弁護士に聞いた。

●「復讐代行」利用はあまりにも危険…業者にゆすられる可能性も

——「復讐代行業」を名乗ること自体は違法ではないのでしょうか。

復讐代行業を名乗ること自体は、直ちに違法ではありませんが、「復讐」となるとどうしても何らかの刑罰法規を中心とした法律違反を犯すことが前提となるでしょう。

ですので、「復讐代行業」で客を集めて仕事を受けた場合、仕事を実行したときは法律違反となる可能性が高くなり、あらかじめ報酬を得たにも関わらず仕事を実行しなかったときは客に対する詐欺となるため、進退窮まる状況に陥るのではないでしょうか。

——もし復讐代行業者に依頼して、業者が人をケガさせる、物を壊すなどの違法な行為をおこなった場合、依頼者はどのような責任を負うことになりますか。

民事上の責任としては、復讐代行業者がおこなった傷害や器物損壊などについて、共同不法行為(民法719条2項)が成立し、復讐代行業者とともに被害者に対して損害賠償責任を負うことになります。

刑事上の責任としては、傷害罪や器物損壊罪について教唆犯(刑法61条1項)や共同正犯(刑法60条)が成立することになるでしょう。

教唆犯や共同正犯が成立する場合、自ら手を下していなくても実際に手を下した者(復讐代行業者)と同じ重さの刑を科されることになります。たとえば、傷害罪なら15年以下の懲役または50万円以下の罰金、器物損壊罪なら3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料となります。

——ネット上にも「復讐代行」を掲げるホームページなどがあるようです。復讐代行を利用しようと考えている人が今もいるかもしれません。

「復讐」自体が何らかの法に触れる可能性が高いですし、そのような「復讐」の代行をするなどと公言している者に近付くのは危険ではないかと思います。代金だけ受け取っていなくなる、依頼の事実をもとにゆすりたかりをおこなってくるなどの被害に遭う可能性もあります。

もし、何らかのトラブルに巻き込まれてしまった場合は、復讐代行を利用しようなどと思わず、まずは弁護士に相談をして見解を聞いてみるのはいかがでしょうか。市役所や法テラス等では無料で気軽に法律相談をすることができますので、そちらの利用をお勧めします。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

本間 久雄
本間 久雄(ほんま ひさお)弁護士 横浜関内法律事務所
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。

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