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送迎バス園児死亡、「気づかなかった」園長は罪に問われる? 園は継続できる?
事件の起きた保育園(グーグルストリートビューより)

送迎バス園児死亡、「気づかなかった」園長は罪に問われる? 園は継続できる?

福岡県中間市の保育園(運営・社会福祉法人)で、送迎バスに取り残された園児(5歳)が亡くなるという痛ましい事件が起きた。熱中症だった。

報道によると、園児は7月29日朝、保育園の迎えのバスに乗り、炎天下で気温の上がった車内で、約9時間にわたって取り残されていた。

保育園が7月31日に開いた保護者説明会で、運転していた園長らは「泣いてる子に気を取られて、気づかなかった」などと説明したという。

県警は業務上過失致死容疑も視野に入れており、園長は取り調べに「確認不足だった」と話したという。どのような法的責任を問われる可能性があるのか、本間久雄弁護士に聞いた。

●過去に業務上過失致死罪の成立を認めたケースがある

――保育園や園長はどんな責任が問われるのでしょうか?

このたびの事故は、本当に痛ましいです。亡くなられた保育園児が、いかに苦しい思いをされたのか、ご家族の気持ちはいかばかりかと思うと胸が張り裂けそうです。保育園や園長には、刑事上・民事上・行政上の責任が問われることになります。

まず、刑事上の責任ですが、園児がバスの車内にいることを確認せずにバスを施錠したのであれば、業務上過失致死罪(刑法211条・5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)が成立すると思われます。

実際、保育園児の園外保育の際、園児1名が自動車内に残っていることに気付かず、園児を炎天下自動車内に放置した結果死亡させたケースについて、担当保母には園児全体の人数確認をおこなう注意義務があるとして、業務上過失致死罪の成立を認めた裁判例があります(平成12年10月31日福岡高裁那覇支部)。

●保育園と園長が連帯して損害賠償を支払うことに

――民事上の責任はどうでしょうか?

園児がバスの車内にいることを確認しなかったことは、園長が負うべき注意義務に反したと言えますので、園長には不法行為(民法709条)が成立するでしょう。また、保育園を運営する社会福祉法人は、使用者責任(民法715条1項)を負うことになります。

保育園長と社会福祉法人は、亡くなった園児の遺族に対して、園児の逸失利益(将来、稼働によって得られたはずの利益)や慰謝料について、連帯して損害賠償を支払わなければならないでしょう。

――行政上の責任はどうでしょうか?

保育園(保育所)の根拠法令は、児童福祉法(39条)です。

そして、同法59条に基づいて、都道府県知事は、問題があると認められる保育園に対して、(1)保育園への立入検査、(2)勧告および公表(児童の福祉のために必要があると認めるときは、施設の設備または運営の改善その他の勧告をすることができ、勧告に従わなかったときはその旨を公表することができる)、(3)事業の停止または施設の閉鎖(児童の福祉のために必要があると認めるときは、都道府県児童福祉審議会の意見を聴いたうえで事業の停止または施設の閉鎖を命ずることができる)といった対応を取ることができます。

おそらく、今回の保育園には、行政による立入検査がおこなわれたうえで、何らかの行政上の対応がされると思われます。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

本間 久雄
本間 久雄(ほんま ひさお)弁護士 横浜関内法律事務所
平成20年弁護士登録。東京大学法学部卒業・慶應義塾大学法科大学院卒業。宗教法人及び僧侶・寺族関係者に関する事件を多数取り扱う。著書に「弁護士実務に効く 判例にみる宗教法人の法律問題」(第一法規)などがある。

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