便利さゆえに、ますます広がりをみせる「ネット通販」だが、注文前に商品を手に取って確認できないという難点がある。そのため、買おうかなと迷ったときに、すでに買った人たちが書き込んだ商品の「レビュー」を読む人は多いだろう。そこでの評判が、利用者が購入ボタンを押すかどうかの判断基準の一つになっているのだ。
ところが、アメリカのウェブサイト「YouGov」が行ったアンケートでは、「5人に1人が商品を試さずにレビューを書き込んでいる」という調査結果が出た。そのなかには、試さずに悪評を書き込んだ人もいたようだ。日本の大手通販サイトでも以前、人気ゲームソフトが発売される「前」に、数百件のレビューが投稿されて、物議をかもしたことがある。
では、実際には商品を使っていないにも関わらず、あたかも使用したかのような感じで「悪評レビュー」を書きこんだ場合、名誉毀損などで訴えられる可能性はあるのだろうか。秋山亘弁護士に聞いた。
●名誉毀損で賠償責任を負う可能性がある
「レビューの内容にもよりますが、実際に商品を使用した事実がないにも関わらず、あたかも使用したかのように装って悪評レビューを書きこんだ場合には、名誉毀損および信用毀損として民法上の不法行為責任を負い、損害賠償責任を負う可能性があります」
秋山弁護士はこのように注意を促す。同じように悪評を書き込んだとしても、使ったうえでのレビューと、そうでない場合で差が生じるのだろうか。
「悪評のレビューを書いたとしても、必ずしも名誉毀損にあたるわけではありません。公益目的や真実性など一定の要件を満たせば、不法行為は成立しないとされています。
しかし、使ってもいないのに使ったとウソをつき、虚偽の内容に基づく論評をした場合には、そうした要件を満たせなくなります」
さらに、このような民事的な賠償責任だけでなく、犯罪行為だとして、刑事責任を追及される可能性もあるのだという。
「また、レビューの内容しだいでは、虚偽の風説を流布したとして信用毀損・偽計業務妨害罪(刑法233条)、あるいは、虚偽の事実を記載したとして、名誉毀損罪(刑法230条)に該当し、刑事責任を負うことにもなります。
もちろん、論評を書く表現の自由はありますが、実際に体験していない虚偽の事実を付記して商品のレビューを書いた場合には、民事・刑事上の責任を問われる可能性がありますので、十分注意が必要です」
秋山弁護士はこのように述べ、安易な書き込みに警鐘を鳴らしていた。