テキーラの一気飲みをさせられた女性が亡くなった――。ネット上でこんな投稿が話題になっている。
投稿内容は、都内の会員制ラウンジではたらく女性が、テキーラのボトルを一気飲みさせられて亡くなったというものだ。
ことの真相は明らかになっていないが、一般論として、お酒の一気飲みをさせることは罪に問われるのだろうか。高橋裕樹弁護士に聞いた。
●一気飲みさせることは「強要罪」にあたる可能性
――お酒を一気飲みさせた場合、罪に問われるのですか?
コロナ禍ではありますが、忘年会・新年会シーズンなので、お酒を飲む機会が多くなる方もいると思います。
まず、成人相手にお酒を勧めること自体は法的に問題ありません。
しかし、飲むように恫喝したり、飲まなければ不利益を課すかのように仕向けるように、社会的に許容される限度を超えた態様・量を超えた飲酒の強要があった場合、強要罪にあたります。
その結果、意識喪失や急性アルコール中毒にさせたような場合は傷害罪あるいは過失傷害罪、さらに死亡に至らせた場合は傷害致死罪、過失致死罪になるでしょう。
――どれくらい重いのですか?
傷害罪は15年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金とかなり重い罪になります。過失傷害罪は30万円以下の罰金または科料です。
傷害致死罪は3年以上20年以下と相当重い罪であるうえに、裁判員裁判の対象事件です。裁判員裁判が始まってから特に量刑が重くなった犯罪の1つが傷害致死罪なので、有罪となった場合には厳しい結果が待っているでしょう。
過失致死罪は50万円以下の罰金です。
――たとえば「●分で飲んだらお金がもらえる」というゲームだった場合はどうか?
このような場合、少し難しい問題があります。
お酒を強要したのであれば、先ほど述べたように犯罪になりえますが、テキーラチャレンジというゲームに自分から志願して飲んだのであれば、お酒の強要とはいえないので、犯罪にはならない可能性が高いからです。
ただし、ゲームやレクリエーションのかたちをとっていたとしても、言語・非言語の同調圧力や忖度があったり、「やってくれなきゃ指名を外そうかな」のような不利益をチラつかせられるということもあります。
このような場合は、単にゲームに志願したという点だけをとらえて、「犯罪ではない」「自分で飲んだ」とは言い切れない場合もあると思います。
●周りの人も罪に問われる可能性
――もし仮に一気飲みを煽っていた人がいた場合、その人たちも罪に問われますか?
みなさんも気を付けなければならないのが、直接、一気を強要した人ではなくても、その場にいた人が犯罪になる可能性があるという点です。
たとえば「あいつを潰そう」というかたちで共謀していれば、強要罪、傷害罪、傷害致死罪の共犯ですし、その場でコールをするなどの方法ではやし立て、飲酒を促進させたような場合は現場助勢罪(1年以下の懲役または10万円以下の罰金)という犯罪が成立する可能性もあります。
――かなり厳しいですね。
さらに言えば、一気などでお酒を飲ませることだけが犯罪ではありません。
お酒を煽った人や居合わせた人が、飲んだ人の著しい体調悪化を認識しながら、その場に放置して離れたり、救急車を呼ぶなどの適切な行為をおこなわなかった場合は、保護責任者遺棄罪(3カ月以上5年以下の懲役)、放置されたことにより死亡した場合は、保護責任者遺棄致死罪(3年以上20年以下の懲役)に問われます。
この責任は、お酒を飲んだ人がホストやホステスなのであれば、店の経営者側にも同じ犯罪が成立する可能性があります。
いずれ一気の強要が犯罪だということは、もっと広く知られるべきだと思います。お酒は飲んでも飲ませるな!