2019年11月10日 09時02分

社会の偏見が「元暴アウトロー」を生む…暴力団からの離脱、待ち受けるハードル

社会の偏見が「元暴アウトロー」を生む…暴力団からの離脱、待ち受けるハードル
廣末登さん(左)、廣瀬伸恵さん

年々、暴力団員の数は減少しているが、離脱者が「一般人」となるための壁は多いという。社会はどう向き合うべきか。暴力団からの離脱を考えるシンポジウム(主催・東京三弁護士会)が10月30日、都内で開かれた。

シンポには暴力団研究の第一人者である廣末登さんや、元暴力団幹部の中本隆さんらが登壇した。廣末さんは「人を排除しない社会について考えてほしい」と訴えた。

●「ゼロからではなくマイナスからのスタート」

中本さんは一般市民を巻き込む事件が数多く起き、「昔憧れた暴力団の生き方とはちがった」ことを理由に暴力団を離脱した。現在は北九州市内でうどん店を営んでいる。

「約30年近く暴力団として死ぬ気で生きてきました。『今度は死ぬ気でカタギになってやろう』と思ったら、気持ちが楽になった」と語った中本さん。暴力団をやめるために必要なことは「一言で言えば、覚悟」だという。

「やめられない人は、その後の生活や報復を心配しているのだと思います。贅沢を求めて入っている人はやめにくい」(中本さん)

暴力団をやめて「一般人」に戻ったとしても、銀行口座を開設できなかったり、就職しづらかったりするなど、さまざまな困難が伴う。中本さんは「ゼロからではなくマイナスからのスタートであることを覚悟しなければならない」とした。

「暴力団ではない『一般人』が当たり前に持つことができるものを持つことができません。社会的制約があります。元暴力団だという風にみられることは当たり前のことで、そこからのスタートとなります」(中本さん)

●協力雇用主「みんなのお母さんになりたい」

暴力団の離脱者を支援する人たちもいる。シンポジウムに登壇した協力雇用主(刑務所の出所者などを雇用し、更生のために協力する民間の事業主)の廣瀬伸恵さんもその1人だ。廣瀬さんは現在、建設会社「大神ワークサポート」(栃木市)を経営している。

廣瀬さんは両親の離婚をきっかけに非行や犯罪に走り、刑務所で服役していた経験がある。しかし、妊娠・出産を経て、「過去は変えられないけれども未来は変えられる」と生まれ変わることを決意。

「家庭環境が悪いと、その子の人生が大きく変わってしまう。みんなのお母さんになりたい」という思いで、協力雇用主に登録したという。

「ふつうの生活をしたことがない人やさびしい人も少なくありませんでした。少年院から出てきた人は、生まれながら乳児院にいたという人もいます。

家族同然で接するように心がけています。できる限り、私が全員分のご飯を作り、食卓を囲んで皆で夕食をとったり、体調不良の従業員にはお見舞いに行き、風邪薬やバナナや栄養ドリンクを持っていったり、お粥を作ってあげたりしています」(廣瀬さん)

社員は36人。うち22人が少年院の出所者、うち5人が暴力団の離脱者だという。全員がうまくいくとは限らない。しかし、「それなりの覚悟をもって、暴力団を離脱した人は比較的うまくいっている」という。

●「離脱者を元暴アウトローにすることで、新たな被害者を生む」

暴力団を離脱し、一般人として生き直そうとする人に社会はなにができるのだろうか。

廣末さんは「社会に居場所を得ることができなかった離脱者は、生きるため、家族を食べさせるために、カネを稼がないといけません。そうすると、彼らは元暴アウトローとして、半グレなどと組んで悪事を働きます。たとえば、覚せい剤の販売、恐喝、各種詐欺などです。離脱者を元暴アウトローにすることで、新たな被害者を生んでしまう」と指摘した。

離脱者支援をおこなっている櫻榮茂樹さん(暴力追放運動推進都民センター代表)は「就労支援にも離脱者同様の『覚悟』が必要」とした。

齋藤理英弁護士(民事介入暴力対策特別委員会・委員長)は「暴力団は憎むべき存在で、撲滅すべき対象であることはいうまでもありません。しかし、そういった環境に身を置いてしまう人には、さまざまな事情を抱えた人が多く、かならずしも非難できない場合もあり得る」とした。

そして、「覚悟を決めて暴力団をやめ、真っ当な社会人として生きていくと決めた人については、それが確認できる限り、私たちも覚悟をもって、できるだけ受け入れるという発想を持つべき」と訴えた。

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