ラグビー日本代表の五郎丸歩選手の人気がとどまることを知らない。そんな彼の人気に便乗したのか、11月には五郎丸選手の名前と、アニメ「プリキュア」シリーズのキャラクター「星空みゆき」の名前で、文房具やアニメDVDの寄付が横浜市緑区の区役所に届けられた。
報道によると、送り主の住所が架空のものであったことから、匿名の寄付と見られている。中には「子どもたちが笑顔で迎えられるクリスマスが来ますように」などとメッセージが添えられていた。
以前、アニメ「タイガーマスク」の主人公である「伊達直人」の名前で寄付があいついだことがあった。伊達直人や星空みゆきは架空のキャラクターだが、五郎丸選手は実在の人物だ。子どもたちに向けた、純粋な善意による寄付だったとしても、実在の人物の名前を利用することは、法的に問題ないのだろうか。中村憲昭弁護士に聞いた。
●名前を使われた人に迷惑がかかる可能性がある
「それにしても、五郎丸選手の人気はすごいですね。一時期人気が下火になっていたラグビーが、再び脚光を浴びるようになってとてもうれしく思います。それはさておき、いくら寄付のためとはいえ、他人の氏名を騙(かた)って法律行為を行うことはやめたほうがよいでしょう」
中村弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。
「名前を騙っても、贈与した相手に財産的損害は生じないため、ただちに詐欺罪は成立しません。
しかし、他人の名前を騙って贈与する旨を文書化することは、私文書偽造罪になり得ます。住所が架空であり、本人でないことは一目瞭然のようですから、罰せられることはあまり考えられないとしても、他人の名前を使うのは避けたほうが良いでしょう。
架空のキャラクターやその人の通称名であれば、まだ許されるかもしれませんが、実在の人物の名を騙った場合、名前を使われた人に迷惑がかかるおそれがあります。
たとえば、大きなお金を寄付すると、その出処を怪しんで名義を使われた人に税務調査が入るかもしれません。私が名前を騙られたら、偽計業務妨害罪で訴えたいですね(笑)
昔から『嘘つきは泥棒の始まり』と言われるように、嘘をつくことはほめられたことではありません。せっかく寄付という『良いこと』をするのならば、『悪いこと』とセットでする必要はないでしょう。
照れくさいのであれば、匿名でいいでしょう。名前を名乗らないことは、嘘ではありません。少なくとも、実在の人物の名を名乗るのは止めたほうが良いと思います」
中村弁護士はこのように述べていた。