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死刑囚の元組長が「過去の殺人」告白…新たに「刑罰」が科されるのか?
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死刑囚の元組長が「過去の殺人」告白…新たに「刑罰」が科されるのか?

殺人などの罪で死刑判決が確定した元暴力団組長が、別の殺人事件に関わったこと告白したことを受けて、警視庁と神奈川県警は4月19日、神奈川県伊勢原市の山林で、捜索を始めた。

報道によると、組長が殺害に関与したとされるのは、東京都新宿区で不動産業を営んでいた男性で、1996年8月に自宅を出たまま失踪し、家族が警察に捜索願を出していた。遺体が見つかればDNA鑑定などで身元を特定し、死因について詳しく調べる方針だ。

死刑が確定している死刑囚であっても、新たな犯罪が発覚した場合は、裁判にかけられることになるのか。もし、その裁判で有罪になった場合には、死刑との関係はどのように考えればいいのか。刑事手続に詳しい伊藤諭弁護士に聞いた。

●死刑が確定している場合、「没収」以外の刑罰は科されない

「死刑が確定していたとしても、別の犯罪に関わったことが疑われる場合、検察官はその人物を起訴することができ、裁判所は、その犯罪について有罪・無罪の判断をすることになります

伊藤弁護士はこのように述べる。既に確定している死刑判決との関係は、どう考えればいいのか。

「今回関与を告白した殺人事件が仮に有罪だとすると、既に死刑が確定した事件の裁判の前に犯した罪ですから、『併合罪』(刑法45条後段)として扱われます。

『併合罪』というのは、簡単に言えば、複数の罪の刑罰を決めるための処理方法のひとつです。

まだ裁判を受けていない事件(今回のケースでは、元組長が告白した殺人事件)は、確定した事件(元組長が死刑判決を受けた事件)に対する『余罪』としてさらに処断される(刑法50条)ので、この件について起訴されれば、裁判員裁判により、別個に判決が言い渡されます。

もっとも、死刑判決が確定している場合には、新たな裁判でどのような刑が言い渡されても、没収以外の刑罰が執行されることはありません(刑法51条1項ただし書)。

そのため、今回のケースでも、仮に起訴されて殺人の罪で有罪判決を受けることになっても、没収以外の刑罰を受けることにはなりません」

伊藤弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

伊藤 諭
伊藤 諭(いとう さとし)弁護士 弁護士法人ASK川崎
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。中小企業に関する法律相談、弁護士等の懲戒請求やトラブル対応などを手がける。第一法規「懲戒請求・紛議調停を申し立てられた際の弁護士実務と心得」著者。

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