奈良県警は5月12日、奈良市のゴミ処理場から資源ゴミを持ち出したとして、男性4人を窃盗容疑で逮捕した。
朝日新聞によると、4人が盗んだと疑われているのは、処理場で保管していた自転車約50台と空き缶約860kg。市がスクラップして競売に出す予定だったという。警察は売却された可能性が高いとみている。
しかし、これらはもともと市民が捨てたゴミのはずだ。どんな場合なら、ゴミを持ち帰っても罪にならないのだろうか。ゴミ問題にくわしい梶山正三弁護士に聞いた。
●所有権が誰にあるかが問題
「海にすむ魚など本来所有者がいない物や、所有権が放棄されてしまった物は、『無主物』と呼ばれます。このような無主物は、誰かが所有の意思を持ってそれを自己の占有(支配)の下におけば、所有権を取得できます(民法239条1項)」
ということは、ゴミ捨て場や道ばたに放置された家具、自転車などは『無主物』として、もらってしまっても良いのだろうか。
「これはケースバイケースです。たとえば、放置自転車については、過去に『占有離脱物横領』(いわゆるネコババ)として送検された事例があります。つまり、無主物(所有権が放棄された)と認められない場合もあるということです。
一見、所有権が放棄されたように見えても、所有者の意思としては『放棄していなかった』という場合もあるでしょう。この場合は、所有者に返さなくてはなりません。客観的な状況から所有権が放棄されたと信じることに合理的な理由があれば、占有離脱物横領の故意がないとして犯罪にはなりません」
では、今回の場合はどうだろう。
「今回は、市が設置管理している資源ゴミ収集場所に、市民が資源ゴミとして出したものですから、収集されたゴミは市に所有権があります(民法239条1項)。したがって、そこから無断で物を持ち出せば窃盗罪が成立します」
梶山弁護士はこのように話していた。