映画『プラトーン』や『メジャーリーグ』などで知られるアメリカの人気俳優チャーリー・シーンさんが11月中旬、テレビ番組で、HIVに感染していることを告白した。報道によると、シーンさんは4年前にHIVと診断されたという。現在、エイズは発症しておらず、薬を服用するなどの治療を受けているそうだ。
シーンさんは派手な女性関係でも知られ、性交渉を持った女性たちが訴訟を検討していると報じられている。なかには「HIVに感染していること」を知らされずに、シーンさんと性交渉をしたと言っている女性もいるようだが、この点について、シーンさんは「全員に感染していること伝えた」と主張している。
もし仮に日本で、HIVに感染していることを隠して、女性たちと性交渉をしていた場合、法的な責任を負うのだろうか。また、もし相手をHIVに感染させてしまった場合は、どうなるのか。徳永博久弁護士に聞いた。
●刑事上の責任は?
「日本の場合、刑事上の責任として、傷害罪が成立する可能性があります」
徳永弁護士はこのように述べる。どうして、そういえるのだろうか。
「傷害罪は、人を殴る蹴るといった暴力によって、相手をケガさせた場合だけではなく、人の生理的機能に障害を与えた場合も成立します。簡単にいうと、人の健康状態を不良にした場合です」
HIVに感染していることを隠して、性交渉をおこなった結果、相手をHIVに感染させた場合、どうなるのだろうか。
「そのような場合は、傷害罪が成立する可能性があります。傷害罪は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されるおそれがあります」
幸いにも、性交渉の相手がHIVに感染しなかった場合はどうだろうか。
「人の生理的機能に障害を与えた、つまり人の健康状態を不良にした、という結果が生じていないことから、傷害罪は成立しません」
●民事上の責任は?
一方で、民事上の責任はどうなるのだろうか。
「民事上の責任としては、不法行為に基づく損害賠償責任が生じる可能性があります。
自分がHIVに感染していることを隠して性交渉を行った結果、相手がHIVに感染してしまうと、『相手の身体の健康・安全』という重大な利益を侵害したことになります。
したがって、不法行為が成立しますので、治療に要する費用(交通費、介添費も含む)や、就労上の支障で得られなくなった給与相当額、さらには精神的損害としての慰謝料などについて損害賠償責任を負うことになります」
とても重い責任を負うことになるようだ。
「もっとも、被害者側からすると、被害者が不特定多数の相手と性交渉をもっていた場合、刑事・民事のいずれにおいても『この人に感染させられた』という因果関係の立証が困難となってしまいます。
HIVに感染しても、その相手を特定できないことを理由として、法的責任の追及が認められなくなりますので、その点には十分注意する必要があります」
徳永弁護士はこのように話していた。