「ギャンブルで全財産失った。しかも借金は400万円、所持金は5000円しかない。あと生きれて一週間くらいかなぁ・・・」。インターネットの掲示板に、そんな悲痛な書き込みが投稿された。
試しに手を出したギャンブルで100万円を儲けたことから、賭け事のとりこになり、ギャンブルで「生活できると思ったんだよねー」。その勢いで、仕事も辞めてしまった。しかし、負けが続いて借金を重ねるようになり、消費者金融から150万円、友人から100万円、さらに税金とクレジットカードの延滞金もそれぞれ100万円、50万円ーー。借金の総額は400万円までふくらんだ。
今は、金を借りたくても「審査落ちで、借りられるところはない」状況で、友達も親からも見放されてしまった。家賃を払えず、明日の食べ物にも困る始末だ。
こんな悲惨な状況に対して、コメント欄には「自己破産」を勧める声があいついだ。だが、ギャンブルによる借金でも、自己破産できるのだろうか。また、自己破産すると、どんなメリット・デメリットがあるのか。小松雅彦弁護士に聞いた。
●ギャンブルでも自己破産は認められる?
「自己破産は、債務で苦しむ人の救済のために機能しています。破産して免責許可されると、債務を払わなくて良くなります。しかし、ギャンブルで多額の債務を作った場合は、免責不許可が原則です(破産法252条1項)。
ですが、ギャンブルの負債であっても、少額であれば、免責許可になることが多いのが実情です。また債務が多額だった場合でも、東京地裁では、裁判所から選任され、債務状況や資産状況を調査する『破産管財人』への協力を免責許可の積極的事情としています。
全国の裁判所で運用が異なりますが、ギャンブルが直接的な原因であっても、なるべく免責を認める傾向にあるようです」
自己破産が認められたら、どんなメリット・デメリットがあるのだろうか。
「自己破産のメリットは、債務を全額支払わなくて良いことと、手続の期間が短いことです。これに対し、同じく借金を整理する手段である『民事再生』や『任意整理』は、自己破産のように支払い義務がなくなるものではありません。また、長期間にわたって支払いは続きます。
いっぽうで、自己破産のデメリットとして影響が大きいものに、資格制限があげられます。自己破産の申し立てをすると、一時的に就けなくなる職業があるのです。弁護士、司法書士、税理士など『士業』のほかに、警備員、旅行業者、生命保険募集人、宅地建物取引業なども制限されます。なお、免責確定で、この資格制限はなくなります」
自己破産が認められた後、気をつけるべき点はあるのだろうか。
「銀行やクレジットカード会社は、それぞれ信用情報機関に顧客情報を登録します。破産も1つの搭載事由で、5年から10年間、その情報は搭載されます。この期間は、借金やクレジットカードの作成ができません。車のローンを組もうとするとき、よく問題となります。
自己破産のメリットの裏返しですが、比較的容易に債務から解放されるため、生活の立直しができないまま、ふたたび借金を重ねてしまう人もいます。上記の信用情報機関に登録されていて、銀行等から借金できないので、ヤミ金等から借りる事態となり、さらに大変な借金地獄をまねく恐れもあるのです」