「裁判に勝つことだけがゴールではない」離婚問題に注力し、依頼者にとっての幸せを常に考え続ける
会社員からの転身「法律の資格を取って、世の中のために仕事がしたい」
ーー弁護士を目指したきっかけや理由について教えてください。
私が弁護士を目指したのは、社会人になってからでした。働いていた会社から、突然リストラされてしまったためです。その後、職業訓練校に通い、宅建の資格取得を目指して勉強を始めました。
その時に、「法律を使う仕事っていいな」、「法律の資格を取って、世の中のために仕事がしたい」と考えるようになりました。
宅建の資格を取った後、講師から司法書士試験の受験を勧められたのですが、司法書士の資格では、取り扱える案件の幅が狭いことを知りました。それなら、弁護士の資格を取ったほうが自分の望む仕事ができるのではないかと考えました。
弁護士試験を受験するためには、ロースクールを卒業して受験資格を得ることが必要でした。そのため、はじめは、ロースクールに入学するために、働きながら夜間大学に通学しました。その後、ロースクールに入り、司法試験の受験勉強を始めました。
――ロースクールでの受験勉強は大変でしたか?
いいえ、全く大変だとは思いませんでした。私自身たくさん勉強することは苦ではありませんでした。
社会人の場合、どんなに仕事をしても結果を出さなければ褒めてもらえませんよね。一般社会のように、わずらわしい人間関係も男女差別もなく、ただひたすら将来に向かって邁進すれば、周りから応援してもらえるわけです。私にとってロースクールはパラダイスでした。
司法試験に合格して、愛知県内の法律事務所に就職し、そこで4年間経験を積みました。
――その後、今の事務所を立ち上げるまでの経緯を教えてください。
最初に入った事務所は、10人くらい弁護士がいて、多くの事件を扱っていました。たくさんのことを吸収できるいい環境だったのですが、とにかく忙しくて、時間に追われていました。
例えば、法律相談は必ず30分以内に終わらせる必要がありました。次の相談者の予約がすでに入っていて、時間が延びるとお待たせすることになってしまうので。でも、30分で相談が終わることはまずありません。私としては、もっとじっくり相談者のお話を聞きたいのに、物理的に無理ということがよくあって。「せっかく来てくださったのに…」と申し訳なく思っていました。
「もう少し自分で時間をコントロールしたい 」と考えるようになり、じゃあ独立しようかということで自分の事務所を開設しました。
「法的な解決が難しいケースでも、傷ついた人に少しでも寄り添える弁護士でありたい」
――注力分野と、その分野に注力している理由を教えてください。
一番力を入れているのは離婚案件で、次に不動産案件です。
離婚案件の場合、女性の依頼者は女性弁護士を指名することが割と多いです。「男性弁護士は、女性特有の気持ちを理解してくれない」という声をよく聞きます。債務整理の案件も、女性からの依頼が多いですね。
私はじっくり人の話を聞くことが好きです。一生懸命に話を聞いて、依頼者と力を合わせ、解決に向かって頑張っています。
――不動産案件に注力しているのはなぜですか。
不動産の仕事をしている方と面識があって、その方の相談を受けているうちに、徐々に、不動産に関する知識が蓄積されていきました。その流れで、顧問先の不動産会社が増えていき、案件も増加したという感じですね。
宅建業法の相談もたくさん受けています。
――仕事をするときに心がけていることは何ですか。
「相談に来られた方の立場に立って物事を解決していく」。弁護士として当然のことですが、その基本を忘れないように心がけています。
また、裁判の勝ち負けだけに焦点を合わせず、依頼者にとって一番よい解決は何なのかをよく考えて案件に取り組むようにしています。そのために、ご本人がどのような解決を望んでいるのか、しっかりヒアリングします。法律的な側面からはもちろん、依頼者の方の人生においてもプラスになることを目指して、解決の手段を提示するようにしています。
――しっかりヒアリングをしたいという思いから、無料相談日を設けているのでしょうか?
そうですね。毎週金曜日の午後を無料相談日としています。基本は、何回相談していただいても無料です。
相談される方の話をしっかり聞いて法的な解決を目指すわけですが、どうしてもそれができない場合もあります。
例えば、男女関係トラブルの相談で、婚約していたわけではないけれど、うまくいかなくなって、彼と別れてしまった。「別れることになったのは彼が悪いから、慰謝料を請求したい」と相談に来られたりするケースです。
残念ですが、この場合、法的に解決することは難しいです。結婚していたわけでも、婚約していたわけでもないので、相手方に法的な責任は基本的には発生しません。
でも、一人の人間として、私がじっくり話を聞いてあげることはできます。傷ついた気持ちを誰かに話すことで、楽になれることってありますよね。「普段の自分を知らない人で、法的な専門知識がある人に、ちょっと相談してみたい」。そのようなニーズは多いのです。法的な解決が難しいケースでも、傷ついた人に少しでも寄り添える人間でいたい。それが、無料相談日を設けている理由のひとつでもあります。
――弁護士として活動してきた中で、印象に残っているエピソードを教えてください。
いわゆる熟年離婚の案件はよく覚えています。相手方とは非常に長く、激しく争うことになり、離婚が成立したときには、依頼者は70歳を過ぎていました。相手方は資産家だったので、依頼者は、離婚成立の際にかなりの金銭を受け取りました。ご本人は「満足しました」とおっしゃっていたのですが、離婚成立後、半年で亡くなってしまいました。
この案件は、調停から控訴審まで、実に4年も続いた事件でした。依頼者は和解を望まず、徹底的に戦いたいということで、私もそのように方針をたてて争い、満足がいく結果を得ました。でも、それが果たして本当に彼女にとってよいことだったのだろうかと、今でも考えてしまいます。
多額のお金をもらうことになったけれど、それを使うこともなく、依頼者は亡くなってしまいました。そんな結末に、虚しさを感じてしまって。
もちろん、望む結果が得られたことで、依頼者の方の気持ちは晴れたとは思います。でも、離婚することだけが目的じゃない。その先にある依頼者の幸せにたどり着くことが、本当のゴールです。
「この結末で、依頼者は幸せになれたのだろうか」と、今でも自問自答しています。依頼者の気持ちを汲むだけでは、だめなのかもしれない。その先にある本当の意味での幸せまで、たどり着かせてあげるのが弁護士の仕事なんじゃないか、と。そう考えるきっかけになった事件でしたね。
最善の解決策を見つけるために、まずは相談を
――プライベートについても伺います。休日の過ごし方や趣味について教えてください。
休日は、犬と一緒に遊んでいますね。2匹いるのですが、一緒に公園やドッグランに行ったりしています。
また、かれこれ2年ほどバドミントンをしています。きっかけは、メタボの夫を運動させるためです。夫は高校時代にバトミントン部だったので、それならまた始めればいいんじゃないかと思って勧めました。
そうして、夫婦でスクールに通い始めたんですが、今では私のほうがハマってしまって。平日も、仕事前に練習しています。朝に思い切り体を動かすと頭も活性化するし、仕事への意欲も湧いてきます。
――今後の展望をお聞かせください。
以前は、「何でもできる弁護士になりたい」と考えていました。でも最近は、分野を絞って、その道のスペシャリストになりたい。今よりもスキルアップしたいと、常に思っています。そのために、たくさん本を読んだり、判例を調べたりしている最中です。
事務所としては、そこまで大きくしたいと考えていません。大きくしてしまうと、結果としてたくさんの案件を対応せざるを得ず、個々の仕事に対する丁寧さにどうしても無理が生じます。ただ、もっと人手がほしいとは感じています。ひとりひとりの依頼者に対して、たっぷり時間をかけたいからです。
――最後に、法律トラブルを抱えて悩んでいる方に対して、メッセージをお願いします。
トラブルを抱えたら、私たちのような専門家に相談してください。結論を出すのはご自身ですが、専門家は、最善の方法でトラブルを解決するための知識を提供することができます。もちろん、ただ相談するだけでもいいです。弁護士に依頼せず、あとはご自身で解決するという選択をされても、全く問題ありません。とにかく、最善の解決策を見つけるために、まずは相談していただければ、と思います。