
保険会社顧問の経験を活かし、交通事故や労災事故に取り組む〜独立後は家事事件にも注力
応援団で活動した大学時代
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
研究者になりたくて理系の高校に通っていましたが、自分は理系の研究者には向いていないと考えるように、大学は文系に進むことにしました。もともと会社員以外の仕事をしたいと考えていたので、実務に役立つ資格を取ろうと思い、法学部に進んで司法試験を目指すことにしました。
ーーどんな学生時代でしたか?
大学では応援団に入っていました。練習はもちろん、先輩後輩の上下関係も厳しかったので、肉体的にも精神的にもかなり鍛えられました。私が通っていた東北大学には、東京大学など七つの国立大学が参加する「七大戦」と呼ばれる対抗戦があって、七大戦は気合いが入りましたね。毎年主管校が変わるので、いろいろな土地に行けたのもいい思い出です。
また、刑事訴訟ゼミの課題で冤罪事件を調査したことも思い出深いです。文献の調査だけでなく、実際に事件が起きた場所に行って、関係者からも話を聞いてレポートにまとめました。弁護団の先生たちの話を聞くうちに、弁護士になりたいという気持ちがより湧いてきました。
パートナー弁護士を経て独立
ーー注力している分野と、注力している理由についてお聞かせください。
受任案件が多いのは交通事故と労災事故です。以前勤めていた事務所で保険会社の顧問をしていた関係で、独立後も保険会社からの依頼が多いです。労災事故は企業側、交通事故は被害者側も加害者側も受けています。
独立してから少しずつ他の分野も取り組むようになり、離婚や相続などの家事事件も扱っています。家事事件は当事者同士の感情のぶつかりが激しく、これまで扱ってきた分野とは違った難しさがありますが、依頼者の心身の負担が少しでも軽くなるように努めています。
ーー事務所を独立した経緯を教えてください。
弁護士になると決めたときから、いつかは独立して自分の事務所を持ちたいと考えていました。
弁護士になって最初に入所した事務所で、5年は勤務弁護士として、その後はパートナーとして働き、2019年に独立しました。
独立したことで忙しくなり、責任も増えましたが、自分で決められることが多いのでやりがいを感じています。また、家事事件を扱うようになってから、いろいろな方から相談されるようになり、人の繋がりも増えたように思います。独立前とは仕事への向き合い方が少し変わったように感じています。
ーー仕事をする上で心がけていることはありますか?
依頼者の話をよく聞いて、丁寧に説明することを心がけています。一見事件と関係ないような話でも、遮らずに最後まで聞いた上で、依頼者の気持ちを害さないようにこちらの方針を話すようにしています。
ーー弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
弁護士になってまだ数ヶ月のときに、初めて国選弁護人として担当した刑事事件が今でも印象に残っています。
義理の娘に性的な虐待をしたとして、児童福祉法違反の罪に問われた裁判の控訴審でした。その裁判の途中、被害者である娘が被告人を許すと言い出したんです。
それが被害者の本心からだったのかは、今でもわかりません。しかし、被害者に処罰感情がないということは、被告人にとって有利に働きます。私は、そのことを裁判で証言してもらうため、娘を証人とするよう裁判所に求めました。
心情的には、被害者の言葉が本心かどうかもわからず、また、被告人はしっかり罪と向き合うべきではないかという思いもあったので、証人請求をためらう気持ちもありました。しかし、被告人の権利を守る立場である以上、そうすることが弁護士の務めだと思ったんです。
結果的に、裁判所は被害者を証人と認めませんでした。私は内心ほっとする気持ちもありましたが、被害者は納得できなかったようで、「なぜ証言させてくれないんだ」と傍聴席から検察官や裁判官に向かって声を上げました。
検察官をはじめ、その場にいた全員が被害者を救いたい気持ちでいるのに、被害者本人が手を払い退けている。そんな風に思えて、胸の痛くなる光景だったことも思い出します。
最終的には一審判決より軽い罪で確定したので、控訴審から担当した弁護人としては、「勝ち」といえる結果です。しかし、それでよかったのか複雑な思いの残る裁判でした。
事業承継など、企業サポートに取り組みたい
ーープライベートについても少し聞かせてください。休日はどのように過ごしていますか?
最近は忙しくて行けていないのですが、ドライブと旅行が好きで、まとまった休みが取れるときは家族で車中泊旅行をしていました。過去には五泊で東北に行ったことがあります。妻はすべて車中泊は嫌だと言って、途中新幹線で移動してましたが(笑)。温泉も好きで、独身時代は各地の秘湯を巡ったりしてました。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
可能であれば人を増やして、自分は少し違うことにも取り組みたいと思っています。特に力を入れたいと思っているのが企業法務です。高齢化が進み、後継者問題を抱える企業が今後増えることが予想されます。そのような企業に対して、事業承継のサポートをしてきたいと考えています。
ーー法律トラブルを抱えていて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
一人で悩むくらいであれば、はやめに弁護士に相談した方がいいと思います。どんな悩みであれ、相談していただければアドバイスできますし、解決の糸口が見つかると思います。トラブルは時間が経てば経つほど解決が困難となります。早めにご相談いただければと思います。