
島 昭宏 弁護士 インタビュー
弁護士を目指した理由
そもそも13歳のときに、有吉佐和子の「複合汚染」を読んだり、フォークの神様・岡林信康の「手紙」という曲を聴いて、環境問題や人権問題に興味を持ちました。それがきっかけとなり、子ども心に社会変革を志すようになりました。そして、高校1年生のときにパンクロックに出会って、音楽こそ社会を変える最高の手段だと、強い衝撃を受けたのです。
それ以来、自分にとって、人の意識を変える手段は音楽しかないという思いで、ロックを歌い、イベントを開催してきました。ところが、41歳の誕生日の朝、ふと「俺は25年バンド活動を続けてきたけど、これからまだ同じぐらいの時間があるのか。人生って長いな」と感じると同時に、このままロックな人生をさらに25年間楽しむのはもちろん最高だけど、当初の目的だったはずの社会にインパクトを与えるということは難しいとも感じました。
そこで、もう1つ違う武器を持てばもっと面白いことができるんじゃないかという考えが芽生え、その後司法試験に環境法が取り入れられたことを知って、弁護士になるのも悪くないと考えるようになったのです。それで16歳のとき以来、初めて自らバンド活動を中断し、ロック弁護士=ロックンローヤーを目指す決意をしたのがきっかけです。
取り組んできた事例
環境問題を切り口とした社会変革という目標が決まっていたのと、自分には若い人たちほど時間がないことから、受験生時代から、弁護士になると同時にトップ・ギアに入れられるよう準備をしていました。
ロースクール1年生のときから、日本環境法律家連盟(JELF)という弁護士約450人による環境NGOのの活動に参加したり、八ッ場ダム住民訴訟の傍聴を続けるなどして、環境訴訟の現場にいるイメージを持ち続けてきました。
弁護士になってからは、気候変動をテーマにした「シロクマ弁護団」に参加したり、原発メーカー訴訟の弁護団長として最高裁まで争ったり、再生可能エネルギーを推進するための団体を作ったり、弁護士会で動物部会を作ったり、出版をしたり・・・と思い通りの弁護士活動を続けています。
仕事で嬉しかったこと
毎日が充実しています。特に、同じような問題意識を持ち、同じ思いを持つ人たちと弁護団を組んで、国や大企業を相手に闘う環境事件は、バンド活動と共通する感覚で取り組むことができて最高です。
また、例えば一般民事事件でも、ぐちゃぐちゃになって困っている人の話を聞いて、法的に整理をしてあげることで、問題点が明確になり、一気にすっきりした表情に変わるのを見ることができます。
大変だと感じること
今のところはないですね。嫌なのは、先生と呼ばれることです(笑)。
弁護士としての信条
弁護士は社会的な善悪を考えたとき、常に善の側に立てるわけではありません。例えば刑事事件の弁護人になるということは、勝ち負けだけでなく、そこには必ずもっと大切な意味があるはずです。その人やその事件に関わり、そこで頑張ることによって、社会的にどのような意義があるのか、自分はどの方向に力を尽くすべきか、必ず納得して取り組むようにしています。
依頼者に対して心がけていること
愛情を持って、自然体で接することです。お互いに警戒心やハードルを作らないようにすることで、早く本音で話すことができるし、より良い解決に向かって協力し合うことができます。愛情があればいくら厳しいこと言っても構わないと思っています。
特に関心のある分野
環境事件や国賠訴訟など、巨大な力を相手にする事件です。ロック・スピリットがうずきますね。また、受験生の頃はまったく興味がなかった企業法務ですが、今では企業活動のダイナミックな展開を知り、最も関心のある分野となっています。深刻な医療過誤事件もやりがいを感じますね。
メッセージ
あらゆる人はものすごい可能性を持っています。夢は必ず叶うなんてことを言うつもりはありません。ただ自分の可能性を信じて、全力で一歩でも前に進む、その過程にこそ大きな意味があるはずです。夢の途中でも、最期は前のめりに倒れて終われればいいと思いませんか?