医療過誤にあった経験から弁護士を志す〜医療の安全と患者の権利を守るため医療過誤案件に注力
中学生の頃に医療過誤の被害に遭う
ーー弁護士を目指したきっかけを教えてください。
中学1年生のときに、医療過誤を経験したことがきっかけです。腹痛があり病院に行ったところ、急性虫垂炎と診断され手術を受けました。しかし、術後の経過が思わしくなく、別の病院で診察を受けたところ、虫垂炎ではなく、腸が詰まる病気であることが判明しました。
幸い、命に関わるような大きな事故にはならなかったものの、この経験から医療過誤に関心を持ち、医療安全や患者の権利を守るために弁護士になりたいと思ったのです。
ーー司法試験の勉強は大変でしたか。
大学2年から本格的に勉強を始め、ロースクールを含めて約5〜6年間、勉強を続けました。当時の司法試験は科目数が多く、様々な科目に取り組む必要がありました。
しかも、医療の分野は試験に出題されることがあまりないため、自分の興味の対象とは別の知識を身につけなければなりませんでした。勉強は非常に大変でしたが、その過程で得た知識や経験は今の私の弁護士活動に大いに役立っていると思います。
ーー勉強以外で学生時代に夢中になっていたことはありますか。
球技が好きで、中学生のときはサッカー部、高校生のときはハンドボール部に所属していました。大学ではサッカー、野球、バレーボール、テニスなど、様々なスポーツを楽しむサークルに入っていました。
ロースクール進学後もバスケ部に入って活動していました。基本的にロースクールに入ると、1〜2年間は勉強に集中するのが一般的ですが、クラスにバスケ部に所属している人がいて、その誘いで参加しました。
月1回程度の活動だったので、勉強に支障をきたすこともなく、楽しく続けることができました。今までやっていなかったバスケットボールに挑戦する良い機会となり、学生生活がより一層充実しましたね。
ーー現在の事務所に入所した理由を教えてください。
私が弁護士を志したきっかけである、医療過誤を扱っていることが大きな理由です。また、幅広い分野を扱っており、特に憲法課題や人権課題に積極的に取り組んでいる点にも惹かれました。
司法修習生の頃から憲法や人権に関する課題に取り組んでいたため、こうしたテーマに継続して関わることができる事務所を探していました。さらに、弁護団事件のように大規模な案件を多く手がけている事務所であるため、様々な経験を積むことができ、弁護士としてのスキルを幅広く磨けると感じました。
医療過誤案件と情報公開請求に注力
ーー現在の注力分野を教えてください。
主に医療過誤と行政事件の情報公開請求に注力しています。
情報公開に注力する理由は、弁護団の一員としてマイナンバー違憲訴訟の代理人を務めていることにあります。マイナンバーの漏洩事故が各地の自治体で発生し、事故の経過を明らかにするために情報公開請求を地方公共団体や国の行政機関に対して行ってきました。
その経験から、自治体の情報公開審査会の委員や制度運営審議会の委員として活動する機会が増えました。これらの役割を通じて、適正な制度運用をサポートしています。
ーー医療過誤はどのような相談がありますか。
相談内容は様々ですが、手術中に誤って余計な部分を切除してしまったケースや、手術後の対応に問題があったケース、診察時の対応に問題があったケースが多いです。特に消化器系や整形外科の手術に関連するケースが目立ちます。
また、珍しいケースとしては、薬を投与した際の副作用に関する問題があります。
ーー医療過誤をなくすことは難しいのでしょうか。
そうですね。特に手術中の過誤については、完全になくすことは非常に難しいと思います。一般的に、医療現場ではガイドラインや標準的な医療文献に基づいて対応することが求められていますが、手術中の対応については、医師の技術に左右される面もあるからです。
しかし、術後の対応に関しては医師の技術はそれほど影響しないため、ガイドラインに沿った医療対応を徹底することで、医療過誤を減らすことは可能だと思います。適切な医療対応を確実に実施することが、医療過誤を防ぐ1つのポイントになると考えています。
ーー弁護士として活動する上で心がけていることを教えてください。
弁護士に対する意見の中で一番多い不満が「連絡が取りにくいこと」です。そうならないために、できるだけこまめに報告を行うようにしています。また、裁判期日を間違えるようなことがあってはならないので、スケジュール管理の徹底を心がけています。
依頼者とのコミュニケーションにおいては、法律相談や打ち合わせの際に、何を聞きたいのか、どの点を疑問に思っているのかをしっかりと把握するよう努めています。依頼者が聞きたいことや気になっていることを明確にするために、話を聞きながら推測し、その疑問点をしっかりと引き出すようにしています。
ーーこれまでの活動で印象に残ってる事件やエピソードを教えてください。
医療過誤に関して印象に残っている案件として、術後の対応が問題となったケースがあります。この案件では、医療文献を調査する中で、医療機関が文献や解説に沿わない対応をしていたのではないかという疑いが浮上しました。
協力してくれる医師を探して意見を聞いたところ、その方も「医療機関の対応に問題がある」という見解を示しました。そこで、医療機関に対して損害賠償請求を行い、最終的には、医療機関側との交渉がスムーズに進み、こちらが考えていた解決水準に近い形で解決することができました。
この案件が印象に残っている理由は、交渉が非常にスムーズに進んだことと、最初に立てた見通しどおりの結果が得られたことにあります。
医療過誤の多くは訴訟に発展し、解決までに5年以上かかることも少なくありません。この案件は交渉がうまくいったこともあり、2年弱で解決しました。医療過誤の案件としては非常にスムーズに進んだ例で、珍しいケースだと思います。
「医療事故調査制度」がより良い制度となるように尽力したい
ーー趣味や休日の過ごし方を教えてください。
趣味は料理やパン作り、ケーキを焼くことです。しかし、最近は時間が取れないため、なかなか作る機会がありません。
休日は子どもと過ごすことが多いです。父親としてはまだ新米なので、日々勉強しながら子育てに励んでいます。
また、溜め込んだ仕事を一気に片付けたり、事務所や弁護団の議事録を作成したりと、雑務をこなすことがストレス解消になっている感覚もあります。本来の仕事とは少し方向性が異なる作業をすることで、リフレッシュできるのかもしれません。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
情報公開に関しては仕事の幅を広げ、審査会の委員をいろいろな自治体でやってみたいという気持ちがあります。
横浜のような大きな自治体では、審査会の委員を務めるのは行政法学者や弁護士など、普段から情報公開に関して専門的に扱っている方が多いです。そのため、大きな問題が発生することは多くありません。一方、規模が小さい自治体の中には、適正な運用がなされていないところもあると聞きます。
私は普段、情報公開制度を利用する側として請求を行っていますが、審査会の委員を務める上で、その経験を活かせると思っています。請求者がその情報を求める意図を汲み、必要な文書を収集することなどを通して、住民や国民の知る権利の確立に資する仕事ができればと考えています。
医療過誤に関しても、取り扱う案件を増やしたいと考えています。新しい診療科目やこれまで扱ったことのない分野にも携わりたいですね。
「医療事故調査制度」が開始されて約9年が経過しました。この制度は、医療現場で発生する予期せぬ死亡事故の原因を調査し、再発防止策を講じることを目的としています。しかし、運用が進むにつれて、調査の透明性や報告不足、制度の認知度と理解不足などの課題も浮き彫りになっています。
医療事故調査制度を活用しながら医療過誤事件に対応するとともに、課題の改善と医療事故の再発防止に繋がるような活動をしていきたいと思っています。
ーー最後に、法律トラブルを抱えている人へメッセージをお願いします。
自分が抱えているトラブルが法的に解決できるのかどうか疑問に思っている方もいらっしゃると思います。今では、法律事務所での相談や区役所での相談など、法的サービスへのアクセスが以前よりも広がっています。まずはそういった相談機関を利用してみることをお勧めします。
専門的なアドバイスを受けることで、自分の状況を整理でき、適切な解決策を見つけられると思います。