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仮想通貨「億り人」がハマる罠…「間違った情報が拡散」大見光男税理士が警鐘
大見光男税理士(2018年10月中旬、東京都大田区)

仮想通貨「億り人」がハマる罠…「間違った情報が拡散」大見光男税理士が警鐘

仮想通貨は、2017年の相場高騰や2018年になってからの巨額流出事件など何かと話題になっている。自分も仮想通貨の高騰の恩恵にあずかって「億り人」になりたいーー。そう思って投資を始める人も少なくないだろう。ただ、そこで無視してはいけないのが税金だ。

株式取引などと異なり仮想通貨の歴史はまだ浅い。そのぶん、税務署への申告をめぐって戸惑う人は多いという。「仮想通貨が健全な発展をするために税理士としてサポートしたい」。そんな思いから、大見光男税理士は10月4日、『だいたい3分でわかる 仮想通貨の税金の話』(ぱる出版)を出版した。大見税理士に話を聞いた。

●間違った税知識の拡散「非常に怖い」

ーー今回の本はどのような人を意識されてのものでしょうか

「仮想通貨に投資する主な層は、だいたい20代〜40代が多いと言われています。そのほとんどが会社員で、住宅ローン控除で確定申告をしている人もいるでしょうが、多くは年末調整だけで終わっています。確定申告のことがよくわからない人たちです。

仮想通貨は利益が20万円を超えた時に、雑所得として確定申告が必要です。でも確定申告を経験したことがない人たちはやり方がわからない。ネットを見てもよくわからず、税務署に相談にいっても『とりあえず申告書類を出してくれ』と言われたという人も実際にいました。仮想通貨に関して適正な申告納税制度となっていないことは問題だと思っています」

ーー仮想通貨に関してはネットで様々な情報が飛び交っている印象です

「昨年12月、ネットで『仮想通貨』を検索するとかなりの数のヒットがあることに気づきました。その中で、いわゆる『インフルエンサー』がツイッターで流している税金の記事に多くの間違いが含まれていることに驚きました。間違っているものが広まり、知らない人は何となく正しいことだと信じてしまう。これって非常に怖いことだと感じました。

たとえば、会社員でも個人事業主になるための『開業届』を出せば、仮想通貨で生じた利益は雑所得ではなく、税制上メリットがある事業所得として申告できるという書いている記事がありました。この記事を鵜呑みにするのはとても危なくて、トレーダーのように客観的に見て本人の主な業としていない限り、税務署が事業所得だと認めることはないでしょう」

ーー税務署は客観的に厳しく見るということですね

「はい。単に節税目的のために開業届を出し、事業所得として申告するという程度なら、税務署は事業所得だと認めません。仮にこれまで大丈夫だったとしても、その人の申告額が少額で、税務調査をするに値しなかっただけだと思います」

●納税資金、しっかり日本円で準備を

ーー昨年は仮想通貨の相場が高騰しましたが、億単位で利益を出した人からの相談もありましたか

「特に2017年は、仮想通貨は何を持っていても高騰する状況でした。私のところにも『億り人』の相談は何件もありました。もともとの顧問税理士がよくわかっておらず対応できないということで、私のところに相談に来る方もいました。

2017年の話で言えば、仮想通貨で得た利益に対してかかる税金は2017年12月末時点で決まります。この税金がわかった時点で日本円で持っておけば、申告をしても何の問題もないのですが、儲けが大きいと次なる投資への『軍資金』として使ってしまう人がいます。たとえば、ビットコインで大きく儲けて、別の仮想通貨であるイーサリアムに交換してもイーサリアムを保有しているだけで、時価変動のリスクにさらされます。

年明けの2018年1月にはコインチェックで巨額流出事件が起き、仮想通貨に対する不安が広がって、ビットコインなら2017年12月の高騰時に比べて3分の1ほどの価値まで暴落しました。他の仮想通貨はさらに暴落しました。すると2月〜3月の確定申告の際に、納める税金の方が多くなってマイナスになってしまうことがあるのです」

ーー相場が上がればいいものの、自己責任とはいえ下がったときは大変なことですね

「はい。これは仮想通貨のまま保有していることの怖さです。『億り人』のように大きな利益をあげた人であればあるほど怖いことになります。

マイナスになることに気づくと、『これは大変』ということで無申告、つまり脱税をしようと考える人も出てきてしまいます。私なら、相場が下がった時は大変なことになるので、利益確定した段階であらかじめ納税資金を日本円でしっかり持っておきましょうと言います」

●仮想通貨、健全な発展を促すサポートがしたい

ーー仮想通貨の今後をどう見通していますか

「私は仮想通貨は必ず発展していくと思っています。犯罪組織とか匿名性が高いところが利用してきたことで伸びてきた面はあるものの、今では日本を代表する大手金融機関やIT企業が続々と参入しています。健全な発展をするために税理士としてサポートしたいという思いです。

みんな最初から脱税をしたいわけではないし、儲かったぶんはしっかり申告したいと思っているはずです。『申告したいけどできない、教えてくれ』という人の手助けがしたいのです。税理士が『できない』と言って対応を断ってしまうと、脱税をする人が増える懸念があります。私は、しっかりとした受け入れ態勢を今後も整えていきたいと思っています」

【プロフィール】大見光男(おおみ・みつお)税理士。昭和57(1982)年2月生まれ、東京都大田区出身。会計事務所にて働きながら税理士資格を取得し平成29(2017)年10月に大見税理士事務所を開業。マネーや投資、仮想通貨の税金に詳しい

(弁護士ドットコムニュース)

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