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2017年03月18日 09時52分

DeNAキュレーションサイト「プロバイダ責任制限法」からみた問題点

DeNAキュレーションサイト「プロバイダ責任制限法」からみた問題点
DeNA代表取締役会長の南場智子氏(右)ら経営陣

DeNAのキュレーションサイト問題をめぐり、外部の専門家でつくる第三者委員会がまとめた報告書(3月13日公表)は、著作権侵害や薬機法など、法的問題について言及している。さらに、いわゆる「プロバイダ責任制限法」の適用についても、「不適切であったと言わざるをえない」と厳しく指摘している。

DeNAのキュレーション事業が大きくなるについて、同社のカスタマーサポートには、画像や記事を盗用されたことについての問い合わせが増えていたようだ。報告書によると、DeNA側は、指摘を受けた画像や記事は削除していたが、「プロ責法(プロバイダ責任制限法)の適用により、法的責任が免除されることを意識した」対応をとっていたという。

一般に、ウェブサイト運営者は、プロバイダ責任制限法によって、法的な責任が免れるケースとそうでないケースがある。そもそも、どんな場合に適用されるのだろうか。DeNAのように「不適切な」対応がとられる状況は、法律に不備があるといえないだろうか。インターネットの法律にくわしい最所義一弁護士に聞いた。

●立法当時と状況が異なっている

プロバイダ責任制限法は、現在とまったく状況が異なりますが、立法当時、プロバイダ(サーバ管理者やウェブサイト管理者を含む)の多くが零細企業であったことから、「零細企業に対して重い責任を課すべきではない」という観点で、議論・制定された法律です。

そのため、条文の構造も、プロバイダが免責されるための要件を規定する形式になっています。

今回のDeNAの報告書では、プロバイダ責任制限法3条の免責を受けるための要件が問題とされています。

条文を引用すると、非常にわかりづらいのですが、端的にいうと、プロバイダは、問題とされる記事によって、(1)他人の権利が侵害されていることを知っていたか、(2)知ることができたと認められる相当の理由がある場合でないと、損害賠償責任を負わないとするものです。

プロバイダは、記事を投稿する「場」(表現の場)を提供する立場にあります。仮に、自らが管理する「場」に投稿された内容が、他人の権利を侵害した場合、常に、その「場」の提供者であるプロバイダが責任を負わなければならないとすると、プロバイダは、投稿内容のすべてを逐一チェックして、その記事に問題がないかを確認する必要が生じてしまいます。

そのような重い責任をプロバイダに課すべきではないというのが、法律が制定された目的でした。

●プラットフォームなのかメディアなのか、それとも・・・

ただ、プロバイダ責任制限法3条には、例外が定められています。プロバイダ自体が、情報の発信者となった場合(表現をおこなった場合)には、免責を受けることはできないとされているのです。

この点が、今回の委員会の報告書で使いわけられている「プラットフォーム」か「メディア」かという問題です。

単に、「場」を提供するだけの立場であれば、「プラットフォーム」事業者にすぎません。しかし、自らの判断と責任において情報を発信する場合には、「メディア」として取り扱われる(免責を受けることができない)ことになります。

今回の報告書の中では、「クラウド執筆ライターに依頼して作成させる記事や、iemoにおける内製記事、MERYにおけるインターンが作成する記事など、一般ユーザーの投稿とは評価できない記事が存在していたことは否定できず、これらの記事を掲載していた部分についてはメディアと評価せざるを得ない」(P241)とされています。

つまり、iemoやMERYが「プラットフォーム」と「メディア」の双方の機能をあわせ持ったサイトであるとされているのです。

また、「DeNA社内で、『DeNAが運営しているキューレーション事業は、その実態はともかく、対外的には<プラットフォーム事業者>であると説明する』との理解に繋がっていったように思われる」「DeNAにおいては、自らが行っている事業の本質が何であるかという最も重要な視点が抜け落ち、またプラットフォームとメディアとしての境界線に対する意識も欠いてしまったように思われる」(P267)と、会社の対応の問題点についても、指摘されています。

当然のことですが、「プラットフォーム」であるか「メディア」であるかは、実質的に判断されます。そのため、たとえ、対外的に、自らが「プラットフォーム事業者」であると主張したとしても、実態が伴っていなければ、かならずしもそのような主張が認められるものではありません。

報告書にもあるように、「DeNAにおいては、自らが行っている事業の本質が何であるかという最も重要な視点が抜け落ち」、「メディア」であるとの意識を欠いていたことが、今回の事態を引き起こす一因となってしまったのだろうと思います。

●「抜本的な改正がされるべき」

ここにいう「プラットフォーム」であるとの主張は、これまでも、多くのウェブサイト運営者がしてきました。その最たる例が「検索エンジン」です。

先日の最高裁決定で、グーグルがこれまで主張していた、いわゆる「媒介者論」が否定されました。「検索結果の提供は検索事業者自身による表現行為という側面を有する」と判断されています。

最高裁の判断を前提とすると、検索エンジンも「プラットフォーム」と「メディア」の双方をあわせ持ったサイトであるということになります。

実際に検索エンジンがおこなっていることは、入力された検索ワードに関して、検索エンジンが有用と考える情報を有用と考える順序にならべて表示する行為です。それ自体が、一つのコンテンツであるといえますので、検索エンジンでさえも、単純に「プラットフォーム」であると断定することはできなくなっています。

プロバイダ責任制限法が立法されてから、すでに10年以上が経過しています。この間、インターネットを取り巻く状況は大きく変化し、立法当時には、まったく想定されなかった、対応が極めて困難な事態も生じています。

私としては、プロバイダ責任制限法については、そろそろ、抜本的な改正がされるべきではないかと考えています。

(弁護士ドットコムニュース)

最所 義一弁護士
東京大学農学部農業工学科(現生物・環境工学専修)を卒業後、IT技術者や病院事務職(事務長)を経て、弁護士に。一般企業法務や知的財産問題のほか、インターネット関連のトラブルの解決に精力的に取り組んでいる。
所在エリア:
  1. 神奈川
  2. 平塚

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