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2017年02月22日 10時26分

ネット情報の削除代行は「非弁行為」に該当…原告代理人が語る判決の意義と影響

ネット情報の削除代行は「非弁行為」に該当…原告代理人が語る判決の意義と影響
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インターネット上に書き込まれた誹謗中傷などの削除を代行する業者に対して、依頼者の男性が支払った代金の返還を求めた訴訟の判決が2月20日、東京地裁であった。

原克也裁判長は、ウェブサイトの運営者に誹謗中傷などの削除を求めることは、弁護士法が弁護士以外が取り扱うことを禁じた「非弁行為」にあたるとして、契約が無効であると判断。業者に対して、代金約50万円を返還するよう命じた。

今回の判決は、削除行為を非弁行為と認めた初めての判断だといわれている。今後、どのような影響を与えるのだろうか。原告代理人をつとめた中澤佑一弁護士に聞いた。

●個人情報を削除したいという「ニーズ」が企業・個人ともに高まった

――判決の意義はどういうものでしょうか?

現在、多くの業者によって、ウェブ上の記事の削除依頼行為や削除代行行為がおこなわれています。

こうした行為は、かねてより「弁護士法違反ではないか?」という指摘がなされていました。また、一部の悪質な事業者の行為に対する問題も指摘されていました。

しかし、これまで、明確な判断基準やこの点に関する裁判例が存在しておらず、放置されてきたのが現状です。今回の判決で、弁護士でなければ取り扱うことができない行為であるという明確な判断が示されたことは重要な意義を有すると思います。

――インターネット上には、削除代行業者の広告が多くみられます。

ネットの普及とともにネット上のネガティブな情報や、個人情報を削除したいというニーズが企業・個人ともに格段に高まりました。

このニーズの高まりとともに、ここ数年の間で「削除代行」「風評被害対策」「風評コンサルティング」と呼ばれるサービスが多数の事業者によって提供されるようになっていったと考えられます。

今回の判決が示したように、『表現の自由』への慎重な配慮も必要な業務ですので、弁護士以外によるこのようなサービスは違法なのですが、明確な判断がされないまま、ここまで広がってしまったのが実態です。

なお、最近は弁護士法違反との指摘を回避するためか、「削除」等の明確な表現を避けているケースが増え始めていました。

●代行業者に対する返金請求が増えてくる可能性も

――あらためて、判決はどんな内容でしょうか?

今回の裁判で、被告となった削除代行の業者は、簡易な削除フォームからの情報提供をおこなっているに過ぎず、法的な削除請求権の行使ではない、と主張していました。

しかし、判決では、この反論は退けたうえで、「ネット上の記事を削除する」という目的でおこなわれる連絡は、削除請求権の行使であり、ウェブサイトの運営者に削除義務を発生させる行為にあたるなどとして、弁護士法違反であることを認定しました。

この判決に照らせば、営利目的で他人から依頼を受けて、ネット上の記事を削除するという行為は、およそすべてが弁護士でなければできない業務にあたるということになります。

――今後、どのような影響をあたえるのでしょうか?

削除代行をおこなっている業者の広告には、「対策」や「コンサルティング」といったあいまいな表現で、実際にどのような行為をおこなっているかは”ノウハウ”として秘匿されていることも多くあります。今回の判決によって、”実際に記事が消える”サービスはすべて違法とされる可能性がきわめて高くなったと言えるでしょう。

また、今回の判決は、支払い済みの報酬全額の返金も認めています。今後は、過去に代行業者に報酬を支払ってしまった人から代行業者に対する返金請求が増えてくると思います。とくに、このようなサービスを利用している企業については、コンプライアンス上の問題もあり、対応を取ることが必要となるでしょう。

さらに、これまでこの種のサービスを提供していた業者の中から、弁護士と提携してサービスを提供しようと考えるところが増えてくると予想されます。今回の判決で被告となった代行業者も一部弁護士と提携して削除業務をおこなっていました。しかし、弁護士以外の者が、弁護士と提携してこの種の事業をおこなうことも、弁護士法違反です。

弁護士の名前で広告をしていても、実態は代行業者といった違法な提携行為に今まで以上の注意を払う必要があります。

(弁護士ドットコムニュース)

中澤 佑一弁護士
発信者情報開示請求や削除請求などインターネット上で発生する権利侵害への対処を多く取り扱う。2013年に『インターネットにおける誹謗中傷法的対策マニュアル(中央経済社)』を出版。
所在エリア:
  1. 埼玉
  2. 戸田
事務所URL:http://todasogo.jp
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