弁護士の枠を越えて新しい価値を創造したい〜英語力を活かして渉外家事や企業の海外進出に尽力
通訳から弁護士への転身
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
学生時代は法学とは無縁で、大学卒業後は通訳の仕事をしていました。あるとき企業からの依頼で海外との取引の通訳をした際に、法律の知識がなくて苦労したことがあったんです。
弁護士が同席していたのですが、英語がわからない弁護士と法律のわからない通訳とでは、契約書のチェックにも時間と手間がかかりました。そのときに、英語を使える弁護士は需要があるのではないかと思ったんです。
10年以上通訳の仕事をして、北海道知事の専任通訳をやらせてもらうなどキャリアを積み上げていたのですが、思い立って弁護士を目指す決意をしました。
ーー司法試験受験は大変ではありませんでしたか?
法律を学んだことはありませんでしたが、学生の頃から勉強は得意だったので簡単に考えていたんだと思います。ですが、現実は甘くありませんでした。
法学のテストは論述形式が多く、暗記していれば答えられるというものではなかったんです。そのことがわかっていなくて、ロースクールの最初のテストは散々な結果でした。
はじめは通訳の仕事を続けながらロースクールで勉強しようと思っていたのですが、中途半端な気持ちでは司法試験に受からないと思い、通訳を辞めて勉強に専念することにしました。
そこからは勉強漬けの生活でした。他の学生と勉強会を開いたり、予備校にも通い、厳しい試練を乗り越えて司法試験に合格することができました。
ーー注力している分野を教えてください。
相談が多いのは離婚事案です。最初に入った事務所が家事事件を中心に扱っていたこともあり、自然と扱う件数も増えました。
渉外事件も国際離婚や相続などの家事事件が多いです。北海道で渉外家事をやっている弁護士が少ないせいか、多くの依頼をいただいています。
同じ離婚事件であっても、日本人同士のものと国際離婚では手続きの違いがあります。英語が使えるからというだけでなく、国際離婚の知識と経験が活かされる分野だと思っています。
家事事件以外に力を入れているのが、企業の海外進出支援です。弁護士を目指すきっかけでもあった、「日本の企業が海外と商取引する際の手伝いをしたい」という思いが、少しずつですが実現できるようになってきました。北海道には元気な企業がたくさんあるので、多くの企業を世界と繋げられるよう尽力したいと考えています。
依頼者が求めていることを理解して実現する
ーー仕事をする上で心がけていることを教えてください。
法律では割り切れない感情というものがあります。離婚やパワハラなどで傷つけられた心は、裁判で勝ったからといって必ずしも癒えるものではありません。依頼者が望んでいることを理解して、最善の解決を実現することが大切だと考えています。
親権問題などで、相手方と敵対することは好ましくありません。相手を負かすことが目的ではなく、子どもにとって良い解決、紛争終了後の生活に支障がないような解決を目指すことを心がけています。
傷つけられた心を癒やすという意味では、例えば不貞慰謝料を請求するケースでは、金銭よりも謝罪を重視している依頼者が多いように思います。和解調書に「被告は原告に対し、迷惑をかけたことを謝罪する」とあっても、それだけでは誠意が感じられず納得できないと言う人がいます。
そうした依頼者の中には、直筆の手紙を望む人がいます。これまでに何度かその要望を実現できたことがありました。相手方に依頼者の気持ちを伝えて、謝罪の手紙を書いてもらったんです。
手紙をもらったからといってすべてを許せるわけではないと思いますが、「気持ちが楽になった」と言ってくれる依頼者が多いです。
そうした事件を経験すると、改めて依頼者の気持ちに寄り添うことが大事だと考えさせられます。
日本の農産物を守るために農業・食品関連法を学ぶ
ーー休日の過ごし方を教えてください。
休日はオンラインでアメリカのロースクールの講義を受講しています。
数年前、日本のイチゴが海外で無断栽培されているというニュースを見たときに、日本の農産物の価値に対する意識の低さに危機感を覚え、農水知財に関心を持つようになりました。
アーカンソー州立大学は農業・食品関連法に強く、早くからオンライン授業を取り入れている学校で、日本にいながら学ぶことができたので講義を受けることにしたんです。論文を書かなければいけないので、休日返上で頑張っています。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
自分の中で、「新しい価値の創造」というテーマを持っていて、弁護士の枠にとらわれない活動をしたいと思っています。
例えば企業の仕事であれば、ビジネス全体を見渡して会社の経営までサポートをする「戦略法務」です。会社も従業員も取引先も消費者も、みんなが幸せになるためにはどうしたらいいかという視野を持ちながら、企業の価値を高めるサポートに取り組みたいです。
そうした取り組みをコンサルではなく弁護士が行うことで、新しい価値が生まれるのではないかと考えています。
ーー法律トラブルを抱えていて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
私も弁護士になる前にトラブルを抱え、「誰に相談したらいいのだろう」と悩んだときがありました。無料で相談できると知っても、電話をかけるのにも緊張して、怖かったことを覚えています。
きっとみなさんも同じような気持ちでいるかと思いますが、弁護士って怖くないので、安心して相談してください。
相談していただければ、助けになれることがきっとあると思います。誰かに助けを求めることは悪いことではありません。躊躇せずに、まずは連絡をしてみてください。