食品や衣料品、服飾品などのネット通販を活用している東京都内の主婦・J子さんが、先日、国内有数の衣料品のオンラインショップで、初めてのトラブルに遭遇した。「同じ帽子が3つも届いたんです。注文したのは1つ。納品書を確認したら、注文数は1つ。私は損していないんですけど、頭は3つないですし、さて、どうしたものだろう? と」。
J子さんは「このままもらうと窃盗みたいでイヤなんで、返却するつもりです」と考えているそうだ。ただ、このオンラインショップでは、返送は発払いであり、実際のショップに持っていくのも手間・交通費がかかることから、「返却するのにも、腰が重たくなってます」と話していた。
J子さんが言うように、店側のミスで届けられた商品であっても返却するべきなのか。返却しないと横領になるのか。浅野英之弁護士に聞いた。
●気づいた時点で返品義務生じる
「ご質問のケースでは、オンラインショップの間違いに気づいた時点で申告をして、返品をすべき義務が生じます。J子さんの『窃盗みたいでイヤなんで、返却するつもりです』というお気持ちにしたがって対応すれば、法律上の問題はありません」
返さなければ、犯罪になるおそれがあるのか。
「間違いに気がついていたにもかかわらず、得をしたと考えて黙ってもらってしまえば、刑法上の『占有離脱物横領罪』という犯罪にあたる可能性があります。
占有離脱物横領罪とは、占有を離れた他人の物をとってしまう行為のことをいい、刑法254条によって『一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料』に処せられることとされています」
●まずは先方に連絡して返品方法の相談を
なおJ子さんは、返却する際の送料や交通費を求めたいと考えているようだ。
「返品をする気持ちはあるけれど、オンラインショップにおいて購入したため、返品をするときに送料、交通費などの余分な費用が生じてしまうケースもあります。
民法において、このように理由なく得た利得(利益)を返さなければならないという請求権を『不当利得返還請求権』といいます。『誤って配送された帽子』という特定物を引き渡す場合には、民法上、その引き渡し場所は、その特定物のある場所で行われることとなっています。
つまりJ子さんのケースで言えば、引き渡し場所はJ子さんが受け取った自宅となり、実際のショップにJ子さんが持っていく義務はないと言えます。まずはお店に連絡をして、返品方法について話し合いをするのがいいでしょう」